「ねえ龍児くん。そんなにあの人を嫌わないであげて。うまく言えないんだけど、あのひと、口が悪いだけで悪い人じゃないよ。
俺、龍児くんのことも猫汰さんのことも、すごく好きだから。ふたりにはあんまり、ケンカしてほしくないんだ」

気持ちを伝えたとたん、龍児がしょんぼり肩を落とす。

「……なあ豪星。進学するって決めたの、あいつがそう言ったからなのか」

「うん。そうだよ。猫汰さんが、俺と一緒に進学して、今よりもっとたくさん遊ぼうって言ってくれたんだ。そのほうが楽しいよって。
俺もそうだなって思ったから、猫汰さんといっしょに進学する」

「……そっか」

話している内に、「あ!みてみて!」ふと夜空をみあげたとき、星ひとつながれた。

「流れ星だ!年末に見られるなんて縁起がいいね!」

「……どこ?」

俺には見えなかったと、龍児がさびしそうにつぶやいた。



兄と共に妨害し、みごと、龍児と豪星先輩の年末デートを成功させたわけだが。

「……どうした龍児。しょぼんとして」

先輩と別れて、戻ってきたのであろう龍児が落ち込んでいるのを見ておどろく。

「どうしたの?龍ちゃん」兄も、ひょいと相手の顔をのぞきこんでみるが、顔色はさえないままだ。

「なんでもない」

「いや。なんでもないって顔じゃないって。龍ちゃん」

「そうだぞ龍児、豪星先輩となにかあったのか?」

「…………」

話したくないのか、それとも説明ができないのか。口を閉ざしたままとぼとぼ歩く龍児に話しかけていると。

「おい」

道すがら呼び止められる。この声は。

「猫先輩……」

「豪星先輩と帰ったんじゃなかったんすか?」

「そいつに用があってな。ダーリンは先に帰ってもらった」

「え?龍ちゃんに用事?」

「なんすか。珍しいっすね」

「うんまあね。りゅーちゃん。ちょっとこっちきてよ」

そう言って手招きすると、龍児は素直に先輩へ近づき。そして。

「おまえふざけんなよ!!!!!」

がん!!と、龍児が先輩になぐられる。龍児が横へ吹き飛び、倒れた。

「龍ちゃん!!」

「龍児!!」

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