「ねえ龍児くん。そんなにあの人を嫌わないであげて。うまく言えないんだけど、あのひと、口が悪いだけで悪い人じゃないよ。
俺、龍児くんのことも猫汰さんのことも、すごく好きだから。ふたりにはあんまり、ケンカしてほしくないんだ」
気持ちを伝えたとたん、龍児がしょんぼり肩を落とす。
「……なあ豪星。進学するって決めたの、あいつがそう言ったからなのか」
「うん。そうだよ。猫汰さんが、俺と一緒に進学して、今よりもっとたくさん遊ぼうって言ってくれたんだ。そのほうが楽しいよって。
俺もそうだなって思ったから、猫汰さんといっしょに進学する」
「……そっか」
話している内に、「あ!みてみて!」ふと夜空をみあげたとき、星ひとつながれた。
「流れ星だ!年末に見られるなんて縁起がいいね!」
「……どこ?」
俺には見えなかったと、龍児がさびしそうにつぶやいた。
*
兄と共に妨害し、みごと、龍児と豪星先輩の年末デートを成功させたわけだが。
「……どうした龍児。しょぼんとして」
先輩と別れて、戻ってきたのであろう龍児が落ち込んでいるのを見ておどろく。
「どうしたの?龍ちゃん」兄も、ひょいと相手の顔をのぞきこんでみるが、顔色はさえないままだ。
「なんでもない」
「いや。なんでもないって顔じゃないって。龍ちゃん」
「そうだぞ龍児、豪星先輩となにかあったのか?」
「…………」
話したくないのか、それとも説明ができないのか。口を閉ざしたままとぼとぼ歩く龍児に話しかけていると。
「おい」
道すがら呼び止められる。この声は。
「猫先輩……」
「豪星先輩と帰ったんじゃなかったんすか?」
「そいつに用があってな。ダーリンは先に帰ってもらった」
「え?龍ちゃんに用事?」
「なんすか。珍しいっすね」
「うんまあね。りゅーちゃん。ちょっとこっちきてよ」
そう言って手招きすると、龍児は素直に先輩へ近づき。そして。
「おまえふざけんなよ!!!!!」
がん!!と、龍児が先輩になぐられる。龍児が横へ吹き飛び、倒れた。
「龍ちゃん!!」
「龍児!!」
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