猫汰のヒザの裏にウデをつっこみ、体勢をくずす。そのまま双子におさえつけられた猫汰がかたむいたスキに。

「あ!」龍児がつかんでいたウデをひっぱり、走って、豪星を人ごみのなかに連れ去っていく。

「おお!豪星せんぱいかっさらうなんて、やるじゃないか龍児!」

「龍ちゃんファイト―!」

「おおおおまあああええええらぁああああああ!!」

「まあまあ!イケメンせんぱい!」

「たまには龍ちゃんにゆずってあげてよー!」

喧噪(けんそう)が後ろにながれていく。龍児がひとごみをかきわけて、豪星を連れていく。

ある程度走ったところで。

「りゅ、龍児く……っ、」息が切れ、こちらから引っ張ると、「あ、ごめん」気づいたらしい龍児が、振り返って足を止めた。

「う、ううん。いいよ。それにしても、龍児くん、やっぱり足がはやいねー。俺も早い方なんだけど、龍児くんには負けるや」

息をととのえながら、近くにあった大きな石にこしかける。つられて、龍児もちょこんと、となりに座る。

「なんか、二人でしゃべるの久しぶりだね」

「うん」

学校では猫汰と双子がくっついてしゃべることが多かったし、最近は猫汰とでかけることが多く、須藤家に行く機会が減っていた。

龍児とこうして、並んでこしかけるなんて、本当にひさしぶりだ。

「最近、どう?」

「ん。勉強してる」

「そうなんだ。がんばってね、応援してるね。
あ、そうそう、勉強といえばね。俺、進学することにしたよ」

「そうなのか?」

「うん。もともと、俺、高校を卒業したら就職する気でさ。だから、実を言うと、2年生のはじめくらいまで、そこそこにしか、勉強ってがんばったことなかったんだけど。
とちゅうで、ああ、勉強って楽しいんだなって気づいて」

「そうなんだ。さすが豪星だな」

「ううん。ちがうよ。俺がすごいんじゃなくて、勉強を教えてくれた猫汰さんがすごいんだよ」

「…………」

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