「だいじょーぶ?龍ちゃん」
「……ん」
「そう気を落とすなって。しょうがないよ。友達と彼氏じゃ、遊んでもらえるのに分が悪すぎるって」
実際、恋人出来たら付き合いめっちゃ減ったやつとか、ざらにいるしね。
「しかし。クリスマスも正月も断られるとか、惨敗だな」
「かわいそうだけど、でも、相手が猫先輩だと、出し抜きたくてもちょっとむずかしいよね」
なにせ相手のスペックが高すぎる。龍ちゃんが勝っているものといえば、せいぜい潔さくらいだろう。
とはいえ。
「ごうせー……正月は、一日から六日まで、あいつと一緒にいるんだって。……うれしそうだった」
「ほとんど冬休み終わってるじゃねーか」
「彼氏のフリーな時間を最後まで独占する気か。浮気対策のし過ぎだろ」
「…………」
「そんな顔すんなって龍児」
「そうだよ、龍ちゃん」
友達がこうも落ち込んでいると、なんとかしてあげたいなぁという気持ちが、むらっと湧いてくる。
「よっし、まかせて」こたつに傾けていた半身をすっくと起こし、スマホを取り出すと、へんじはアドレス帳からとある名前を探した。そして。
「……あ、もしもーし。豪星せんぱいっすか?どーもどーもへんじっすー」
電話をつなげる。相手は、渦中その人である。
「え?いやいや用事があるわけじゃないんすけど、なんていうかほら、もう年の瀬で、多分もう先輩たちとは年明けまで会わないかなーと思ったら、ほら、挨拶のひとつくらいはしておいたほうがいいんじゃないかって思って。
わざわざありがとうって?いやいや良いんすよ!お世話になってるじゃねっすか!
そういえば先輩。先輩たちって正月もどうせデートしてんでしょ?ってことは、年越しもやっぱりデートするの?
あーするんだー。へー、どこの寺か神社行くんすか?
あー!あそこね。はいはい。ここらで一番大きいところの!こんな寒い時期にラブラブっすねうらやましいっすねー。
やっぱりあれなの?11時くらいに神社の前で待ち合わせて、そっからデートなの?
あーやっぱりそうなんだー!
おーーっと。すいませんけんじが後ろから俺のこと呼んでる。はいはいとつぜんすいませんでした。はーい。せんぱいたちも良いお年を~。猫せんぱいにもよろしくー」
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