猫汰いわく。指定席を取ったのだが、時間をちょっと間違えて、乗る時間が数分後にせまってしまったらしい。

今回の旅行は、行きと帰りがバタバタしてるなー、と思いつつ、足をはやめる。

「もーーー!おべんと買いたかったのにほとんど売りきれてたしーーー!」

「そーですねーーーー!」

「あ!!あそこに一個だけのこってる!ダーリン!あれ買ってあとではんぶんこしよーーーーー!」

「そーしましょーーーーー!」

全力で走ること数分。

「ま…、まに…あったっ」

「そっ……ですね……っ」

ぜえぜえ息をはきながら、新幹線のりばに到着する。

新幹線が向こうからやってくる。ぎりぎりセーフだ。

「あ、ダーリンだーりん!」

「はい?どうされました?」

「ちょっと!そこ立って!うんそこ!」

言われたとおりの場所に立つと、猫汰がすかさずスマホをかまえる。そして。

「うしろに新幹線をひかえたダーリンの写真がとりたい!
というわけで、はいわらってー!」

猫汰のスマホが音をたてる直前に。

「いえい」

指をあげてポーズする。

あとで見せてね、猫汰さん。



とある日の冬休み。

「……あ!もしもし?豪星?あの、俺だけど。うん。龍児。
あの、あのさ。ごうせい、正月、うちにこないか?おっさんと沙世が、豪星がもしヒマならよべって。俺も、ごうせいとおせちたべたい。
……え?あ、そうなんだ。うん。ううん。いい。わかった。それじゃ」

最近よく兄弟と出入りする須藤家。からの、こたつでバリバリ、貰ったせんべいを弟と食べながら、龍ちゃんの背中をのぞいて、ひとこと。

「龍ちゃんまたふられたみたいだねー」

「そうみたいだなー」

「…………」

しょぼんとしながら、玄関の据え置き電話からこたつに戻ってきた龍ちゃんの肩をたたく。

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