綺麗な景色を見ながら手をつないで歩くと、ほどなくして終点に到達する。

目に見えるものが、真っ暗な森林と夜空だけになると、ああ、感動ってほんとうに短いものなんだなと、不意に思った。

「あ、ダーリン見てみて。あっちに神社があるよ」

手を離した猫汰が向こうに明りを見つけて、駆け寄る。猫汰に続いて、豪星も神社をのぞくと。夜も深いというのにそこそこの人でにぎわっていた。

なにやら屋台まで出ている。ふたりでそこをのぞくと、うどんやそば、からあげなどの品目が並べられていた。

みんなが食べているのが美味しそうに見えて、せっかくだし食べていきましょうかと猫汰を誘えば、そく、了解を得る。

豪星はうどん。猫汰はそばを頼み、寒空のした、めんをすする。

うわー。あったかい。寒いところで食べるうどんって美味しい。

お腹のなかからあったまる。というのはこのことだな。

「ダーリン。俺の席とっといて」

そう言って、席を外した猫汰が、しばらくして。

「はい。これもかってきたよー」

両手にコップを持って戻ってくる。片方を渡され、のぼる湯気に鼻を近づけてみる。どうやら熱燗(あつかん)のようだ。

「はー。寒空の熱燗ってすごくいいですね。おいしい。……あ、こぼしちゃった」

「大丈夫?ティッシュあるよ。ふいてあげるね。あ、ダーリン。ここもたべこぼしてるよ。まってまって。ハンカチも持ってるから……」

自分の食事をとめて、豪星の世話をはじめる猫汰を見て。

「…………」

ふと。

なんとなく。

「……いつもありがと」

声が出た。

なんだろう。この気持ち。

「え?やだなーに?ダーリンてば今日、ありがとういっぱい言ってくれるね。嬉しいけどはずかしいなー」

「いやなんか。言いたくなって。なんか、構われるってうれしいなって」

「……いままで、誰かに構ってもらえなかったんだね。ダーリン」

言われて、ああ、その通りだと思った。

俺は構われることが嬉しいんだ。ずっとさびしかったから。

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