「湯葉の試食だって!たべてみようよ!」
「すみませーん!」と、猫汰が店のひとに試食を頼んでくれる。近くの床机(しょうぎ)に座って待つこと数分。
「おまちどおさまー」お盆から小さな皿を渡される。白くて板状のやわらかそうな食べ物を、つまようじでひとくち。
「とろとろだね~」言った本人がとろけそうな口調で、猫汰が至福のひとこと。「そうですね~」豪星もつられて、口がとろける。
「湯葉って、ずっと前に光貴さんたちにたべさせてもらって以来ですね」
「ああ、そうかも。ていうか、あの時、みつたちも此処に旅行に来てたんじゃない?」
「そうかもしれませんね」
湯葉もぺろっと食べ終え。猫汰が「うちでも作りたい」と言うので湯葉のはいった袋をひとつ購入。店から退出し、しばらく歩いて、「あ!ダーリンみてみて!かわいい!」今度は左脇にある雑貨店に入った。
「折り鶴のピアスだ~。ツルがちっちゃくてかわいいね~」
「おおー。ほんとだちっちゃい。すごいなーこれ、俺の小指のあたまくらいしかない。どうやってこんなにちっちゃいツルが折れるんだろう」
「みてみてダーリン。にあうー?」そう言って、猫汰が手に持っていた折り鶴ピアスを耳に近づける。
「お似合いです」
「ほんと?じゃあ買っちゃおっかなー。えへへ。前にこれ、見かけたときも欲しいなーって思ったんだけど、ダーリンに褒められる前に買わなくてよかったー。」
「此処に誰かと来たんですか?」
「ううん。違うよ。あのね、都市部のほうで定期的に開催する、ハンドメイド……ようするに雑貨や被服作品のことね。
の、お祭りがあるんだけど、そこにね、詩織ちゃんが仕事で行くから、時々いっしょについていくの。詩織ちゃんの会社、雑貨も扱ってるし、化粧品のお試しコーナーとかもあるから」
「へえ。そんなところがあるんですね」
「おもしろいよー?すっごく広い会場に、いくつも机並べてね。雑貨ならなんでも売ってるの。40万円もする鉄仮面とかもおいてあったよ」
「なにそれすごい」
37>>
<<
top