「い、いたた!いたたたた……っ!いたいです猫汰さん……っ」

半ば乱暴に髪をとかれてひいひい唸る。猫汰といえば、「がまんして!普段とかないダーリンが悪いんだから!」まだ怒ってるのか手をとめてくれなかった。

暫く髪の毛で乱闘しつつ、落ち着いたころに朝食を食べ、のんびり喋りながら新幹線を満喫していると、ほどなくして目的の駅に到着する。

「一日乗車券の買えるバス停があるはずだから、さがそー」

「分かりました」

とはいえ、土地勘がないので、お互いうろうろ迷いつつ、十数分後、ようやく目的のバス停にたどりつく。

予定通り、一日乗車券を買って乗車待ちの列に並び、これも待つこと十数分。乗り込んだバスの中でちょうど空いていたイスに二人ならんで腰かける。

一息ついたな、と思った豪星のとなりで、「さーてそれじゃあ、次は志水寺前で降りるよー」猫汰がさっそくガイドマップをひらく。旅行に行くと、このひとがなんでもかんでも先導してくれるので、正直楽だ。

「志水寺って修学旅行の定番ですけど、実は俺、行くのはじめてなんですよー猫汰さん」

「……理由はなんとなく察したけど、一応聞いても良い?」

「はい。聞いてください。俺も言いたいです。
あのですね、ちょうど、修学旅行の時と、父親が引っ越したいって言い出した時期が被りまして。きちんと、俺は修学旅行のことを伝えたんですけど、大人になったらいつでも行けるからいいんじゃない?ていうか団体で強制的に旅行いかされるなんて意味わかんないよねー。と、ゆるーく一蹴されまして。
……俺は旅行に行きたかったんですけど、それが全く父親に伝わらなくて。あのときも悲しかった」

「おとーさまのダメ人間!」

「わー。同感してくれるひとがいるとうれしー」

「これからは、俺とたくさん旅行しようね!」

「わー、いくいくー」

と、過去を泣く泣く振り返っている内に、バスが「志水寺前」に到着し、豪星たちと同じ目的であろう人の列がぞろぞろバスを降りる。そのまま、みな志水寺に向かうのだろうと思い、列の背後についていこうとしたが。

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