時刻を確認すると、7時半をまわっていた。猫汰は前日、7時前に起きると言っていたので、確かに寝坊である。
ダーリンは俺が起こしてあげるから大丈夫だよー、と、言っていたけれど、珍しく言葉通りにいかなかったようだ。
「ダーリンごめん!朝ごはん作ってるヒマないからもう行こう!駅でパンとかおにぎり買って新幹線の中で食べよう!」
「了解です!」
前日に旅行の用意はしてあったので、お互い手早く着替えてカバンをつかみ、出発する。予定よりも若干遅いバスに乗り、急ぐこと数十分。駅に到着するなり、コンビニに入って炭水化物のコーナーへ。
「ダーリン!おにぎりなにが良い!?ツナマヨ!?こんぶ!?」
「おまかせしまーす!」
「ランチバッグも買ってくね!たまごとハムマヨかってこ!」
「おまかせしまーす!」
「お茶好きなのえらんで!俺の分はダーリンのと一緒でいいから!」
「りょうかいでーす!」
慌ただしく朝ごはんを購入し、新幹線のチケットを買って改札をとおる。ぎりぎり、予定していた新幹線の時間に間に合ったようだ。
でも。
「猫汰さん。今更ですけど、時間厳守は旅館の時刻だけなので、新幹線は急がなくてもよかったのでは?」
「あ」猫汰が、しまった。みたいな声を出してから。「……もー!それほんと今更!」ぷりぷり怒り出した。到着した新幹線に入って座ると、ヒザをばしばし叩かれる。地味に痛い。
「やだもー。焦って損しちゃった。髪の毛セットせずにきちゃったしー」
そう言って、猫汰がカバンからクシを取り出し、自分の髪を整え始めた。
言われてみれば、彼の髪がいつもより若干はねている。「いつも整えてたんですね」思わず言えば、きっと睨まれた。
「当たり前でしょ!?朝に髪をきれいにしておくとか常識だし!それなのにダーリンてばいつも頭ぼっさぼさのまま歩いてるんだから!
ちょっとは!くしを髪の毛にいれてとかして!」
猫汰が、自分の頭に使っていたクシを、豪星の頭にざくりとさしてくる。
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