「父さん、友達には年賀状、出さないの?」

「え?」虚をつかれたらしい父親が、へにゃりと笑って首をふる。

「うん。出さないよ。会いたくなったら会いにいくから、僕たちに便りはいらないんだ」

「ふうん。仲が良いんだね」

「まあね」

しゃべっている内に帰宅し、中に入ってこたつに入りなおす。豪星はさっそく、購入した年賀状を開けて取り出すと、その横に筆箱と色鉛筆を置いた。

うちには印刷機がないから手書きしようと思ったんだけど、さて。なにを書こうかな。

来年の干支とか……?

「お。豪星くん見てみて。ラブリーパークの年末特集やってるよ」

「……あ、そうだ。三匹の猫ちゃん描いてみよう」

ちょうど、テレビを見て呟いた父親から発想を得て早速描き始める。青猫ちゃんと、白猫ちゃんと、黒猫ちゃんが並んでる絵でいいか。

テレビに時々、本物の三匹の猫が映るので、あれを参考にして……。

「できた!」記念すべき一枚目!これを見ながら他の三枚も同じものを描こう!

「みてみて父さん!年賀状かけたよ!」

「へー?どれどれ。………うーん。相変わらず独特な絵だ。誰に似たんだろう。このセンス」

「どうせ下手ですよ」

「いやいや。味はあるんだよ。味は。すごくある。他にない。でも万人向けかっていうと……うーん……」

「いいでしょ。気持ちなんだから」

「まあね。良いと思うよ」

絵の良し悪しはさっさと切り上げて、他の年賀状にとりかかった。



ゆく年くる年。の、前にクリスマス。

猫汰と話し合った結果。シーズンに合わせて一日目は志水寺付近と嵐川町付近で遊びつつ宿泊し、二日目は適当にまわろう。というプランになったわけだが。

出発前夜に猫汰のマンションに泊ったところ。

「……~~~~~~~~~~~~寝坊したーーー!」

「うぇっ!?」大変珍しい雄叫びに起こされた。布団から半身を起こして辺りを見渡すと、ばったばたに走る猫汰の姿が見える。

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