「猫汰さんと友達のうちからは毎年もらってたのに、俺の方から返したことないなって。
どうせ俺、高校卒業したら家出るから住所変わっちゃうけど、なんていうか、気持ちだけでも出しておきたくなって」

宛先は、猫汰と龍児を含めた須藤家、へんじとけんじに、あとは光貴たち。計四枚。

「ふうん?それはつまり、気持ちを届けたいなって思えた人が知り合いに出来たわけだね」

「そうだね。良い事でしょう?」

「うん。すごくいい事だ」

帰り道。買ったばかりの白紙の年賀状を、父親が「みせてよ」とねだる。

そういえば、この人が年賀状を出しているところも見た事がない。この人には、気持ちを出したい人はいないのだろうか。

「しかしまぁ、これで年が明けるでしょ?で、次のお誕生日がくれば、豪星も19歳。おなじことを繰り返せば成人するわけだ。
いやー、長かった。本当に長かった。僕は人としてちょっとアレかもしれないけど、それでも結構がんばったよねー」

「そういうことはまっとうな父親になってから言いなよ」

「ごめんねー、ダメ人間が父親で」

「むしろ、父さんはさ、俺と父親っていうより、ノリが友達だよね?」

最近、決まった友達が増えたのでなんとなくわかってきたのだけれど、豪星と父親の距離感は、親というより友人に近い気がする。

豪星が成長して、まともに会話ができるようになったら、なおさらのこと。

そう言うと、父親はぽかんとしたあと。「ああ!そっか!」やけに感心された。

「なるほど!そういう見方があったね!そっかそっか。
僕は君に対して、死ぬほど向いてない子育てをするんだって考えるより、いずれ友達になるひとを作るんだって、考えるべきだったな。

そのほうが、僕の気持ちに負担が少なかったかも。僕、友達のこと大好きだし。

ごめんね豪星。そんな風に考える余裕が当時僕にはなくてさ。機転がちゃんと利いてれば、君にもう少しくらいは迷惑かけなかったかなぁ」

「どうだろ。過ぎたことだから分かんないや」

友達。と聞いてふと思い出す。

父親にはひとりだけ友達がいるそうだ。とても大事なひとで、母さんの次に好きだよと何時かに言っていた。

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