となりの猫汰といえば。

「う……、う……っ、うぐ……っ、ひっく……っ」

上映の後半から泣きっぱなしだ。

わからない……。どこに泣くところがあったんだろう……。

「わかる!わかるよ!相手に奥さんも子供もいるけど、でも好きなんだよね!愛してるんならしょうがないよね……!」

そうかなぁ。人のものとっちゃだめじゃないかなー。

「しかも!好きになっちゃった相手が、優しいけど優柔不断で!もだもだして決断力がなくて!このダメ男!でも!わかる!そこがかわいい!そこがいいんだよねー!!」

はははー。それ俺のことかなー。

とりあえず泣きつづける猫汰を退出させ、泣き止むまで椅子にすわらせて、泣きじゃくるのを待つこと十数分。

「ダーリン、映画の半券でクレーンゲームがあそべるんだってー」

さっきの号泣はどこへ吸い込まれたのか。けろっと素面に戻った猫汰が、残った半券を指さして言った。

「二階のゲームセンターのところでしょうか」

「みたいだよ。スタッフのひとに言えばやらせてくれるんだってー」

せっかくだしやっていこうか。ということで、映画館のエントランスを出て二階のゲームセンターへ向かう。

クレーンゲームは、入口からすぐ左手に列をなしていて、近くを通りかかったスタッフに半券を見せると、すぐに対応してくれた。

一人の半券で二回分。計四回分。

台を選べばすぐに出来るとのことで、さっそく、やりたい台さがしを始めた。

「あ!三匹の猫ちゃんの台がある!」猫汰がお目当てを見つけたらしく、しきりとはしゃぎ始めた。

「へー。三匹の猫ちゃんもクレーンゲームの景品になってるんですね」

「みてみてダーリン!あの青猫ちゃん蒸しパンもってる!かわいい!あのデザイン見た事ない!レアなやつだ!」

「ははは。好物が自分と同じだと親近感わきますね」

「あの蒸しパン青猫ちゃん持ってる蒸しパン好きのダーリンを写真にとりたい!俺この台にする!」

「じゃあ、俺となりの台にします」


22>>
<<
top