「わ、かりました……」
そうするほかないよね。と、素直にうなずき、今後のスケジュールを簡単に話し合うと、豪星は進路指導室を退出した。
廊下に出てすぐ。「だーりん!」横からぱっと、猫汰にだきつかれた。一瞬だけ、驚きに身をすくませる。
「ど、どうしました猫汰さん」
「どうしたのはこっちだよ!先生に呼ばれたと思ったらいなくなっちゃって。なに?なんの話だったの?だいじょうぶ?」
「はい。大丈夫といえば大丈夫じゃなくて……ええと、俺の内定先が消えた話でした」
「え?」唐突な告白に、猫汰がぱちっと目を見開く。それもつかの間。
「そっかぁ、残念だったね。でも、入ってすぐ会社が無くなるとかじゃなくて、却ってよかったかもよ」
回転の速い頭で、説明の足りない説明を受け止め、更になぐさめてくれる。「そのとおりですね」本人よりも状況を上手く受け止めている。それが少しだけ笑えてしまった。
「それじゃ、ダーリンまた就活するんだね」
「そうなりますね」
「めんどくさいねー。あ、そうだ。いっそうちくる?詩織ちゃんに雇ってもらおうよ」
「え」
「だってダーリン、とりあえず働きたいってだけで、やりたい仕事があるってわけじゃなさそうだし、働けるならどこでもいいなら詩織ちゃんのところでもいいでしょ?
大丈夫。俺のお兄ちゃんと仕事するのはやりにくいっていうなら詩織ちゃんに相談してあげる。
詩織ちゃんのところ、支部がいくつかあるし、工場のラインで働きたいなら、提携してる工場のラインにお願いして入ったって良いんだから」
「つまり、コネ?」
「コネのなにが悪いの?そもそも、学校就職だって学校のコネ使ってるんだからね。やましいことはなにひとつないよ」
「あ、そうか……え、でもいいの?」
「いいよ。ていうか、そもそも俺も詩織ちゃんも、ダーリンが就職したいならうちで雇ってあげよっかって前々から話してたんだけど、言う前にダーリンてば自分で内定取ってきちゃったから、言いそびれたんだよねー。
でも、思わぬところで役に立つかもしれないね、よかったぁ」
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