「ねーこーたーさーん」

「うふふふ」

泥酔した彼氏は、父親がいないときだけ抱き着き魔なのである。

今も、こたつにもぐったかと思えば、こっちに這い出てぎゅうぎゅう抱き着いてきている。

こういう、スキンシップ過剰な飲みぐせのある人って、家庭環境に難があるっていうらしいけど、彼氏を見てるとその通りなのかもしれない。

今でこそさらっと過去を話すひとだけど、きっと、子供のときなんて、おかーさんいなくてさみしかったんだろうなぁ。父親も、あんなだしね。

「ねこたさーん」

「はいはーい」

よしよし。もっと甘えていいぞー。俺は君専用のヨメですよー。

「ねこたさんのりょーりおいしいですー。じつはがまんしてたべてたんだけどー、さいきんはすっごくおいしいですー」

「ごめんねぇ、これからはなるべく聞いてからつくるね」

「ううん。いーのいーの。いまはどっちのあじつけも好きだよ」

「ダーリン、もっかい言って?」

「?」

「あじつけも、のあとの、もっかい」

「すきだよ?」

「ふふふふふふ俺も」

かわいい。かわいい。俺の彼氏は世界でいちばんかわいい。

「はーいわらってー」スマホを取り出し、カメラアプリにして、俺に抱き着きながら顔を真っ赤にさせた、数分後には寝落ちするであろう彼氏にむかって笑顔を要請。

すると、きょとんとしたあと、ご要望どおりにこーっと笑ってくれる彼氏という名のエンジェル。

幸せすぎて、今日も俺の日常は平和そのものである。



「ふぁぁああぁあぁ……」

大きくのびをして、布団から身体を起こすと、「うえ、」特有のえづきがノドの奥からせりあがる。

美味しいごはんを食べながらお酒を飲む楽しみを覚えてしまった豪星だったが、アルコールを分解しまくった次の日は体調がイマイチになることも覚えてしまった。前者が楽しすぎるから辞められないんだけど。

時刻を見ると、すでに昼間近である。人んちに泊まってるくせに寝過ぎだな。

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