方向性が決まり、あれこれ品目を考え、黒板に書きこんで行く。

料理屋を営んでそこそこ経ったが、いまだに、この瞬間がいちばんたのしい。

「お。そうだ春弥」ふと、また思いついて顔をあげる。

「俺らも、明日はおでんにするか」

「いいねぇ。光貴さん。巾着いれてね。じゃがいもも。たまごは今日つくって味をしみこませよう」

「いいねいいね。醍醐味(だいごみ)だね。よーし、せっかくだ。もうちょっとで来る立冬を祝して、良い酒買ってくるか」

「季節の変わり目をお祝いするって、ちょっといいね」

「だろ?この際だ。絶壁買ってこようぜ」

「いいねー!」

たまの贅沢だ。良い思いしたってバチはあたるまいさ。



こたつとツリーが届いた旨を彼氏に伝えたところ、土曜日の午後から手伝って、そのまま泊ることになった。

そして当日。はりきって彼氏の到着を待つ。

おでんは前日から仕込んで、他のおつまみもいっぱい作って、冷蔵庫に入れておいてある。

あとはこたつを一緒にだしてツリーを飾って、終わったらふたりで飲みたいお酒買いにいっていっしょにおでんをつつくのみである。

ふふふ。しあわせ。

ふふふふ。

なんて、にやけている内にチャイムが鳴る。

「はいはーい!」もみ手しながら出迎えると、「おじゃましますー」彼氏が笑顔でうちの中へ。

ふふふふ。今日もかわいいね。

「こたつとツリーはどこですか?」

「こっちこっち。リビングにあるよ」

彼氏を手招きしてリビングにいざなうと、大きな箱ふたつを見せる。

「へー。梱包されてるとこんな感じなんだー」いたく感心した様子でぐるぐる、彼氏が梱包されたままの家具を眺めはじめる。

家具のあまりない生活をしてたって言ってたくらいだもんね。物珍しいんだよね。たくさん珍しがりつつ楽しんでいってね。

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