「光貴さん。なんでそんなこと知ってるの?」
「猫汰にさんざん聞かされた」
よそ様の彼氏のパンツの柄なんて興味ないんですけどね。
猫汰が、彼氏からの疑いを必死に流す事数分後。「それじゃあねー!」渡すものだけ渡して、二人はさっさと引き上げる。
戸を開ける最中。
「おっと」
「あ」
猫汰の持っていたビニールの底がとつぜん裂けて中身がこぼれた。ごいん!がいん!と、音を立てて落ちたのは。
「あー。猫さん彼氏さん。悪い子だねー」
「白昼堂々、高校生が酒抱えて歩いてるたぁ良い度胸してんな」
ビールにハイボールに梅酒に、ほか数種類の酒が入った缶。「すみません!」慌てて拾う豪星と、「みつー、代わりのふくろない?」図々しくもふくろのおかわりをねだる猫汰。苦笑しつつ、春弥に代わりのふくろを取りに行かせた。
「今から飲むのか?」
「そうだよー。おでんといっしょにねー」
「おー。おでんか。寒いときのおでんって美味いよな」
「ふくろとってきたよー!はい。彼氏さん。猫さん。今度は裂けないよう気を付けてね」
「すみません。春弥さん」
「ありがとーハル。それじゃ、今度こそばいばーい」
袋に酒を詰めなおしたふたりが店をあとにする。戸が閉め切るまで見送ってから……ふと、ひらめいた。
「なあ春弥。鍋、おでんにするか?」
「え?おでん?」
「ああ。猫汰たちがおでん食うらしいんだけど、それ聞いたらぴんときた。
先に具材は大鍋で仕込んでおいて、客に出すときは小鍋で出すのってどうだ?」
「面白いねそれ。じゃあ、タレと薬味をいろいろそろえようか」
「あ!またひらめいた!いっそ、今週の献立ねりものづくしにしようぜ。車でちょっと走ったところに専門店あるだろ?あそこで色々仕入れて、焼きちくわとか、ねりものの刺身風とかも出そうぜ」
「美味しそう!それじゃあ、さっそく明日の午前に見に行こうよ、光貴さん」
「そうするか」
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