相方とは長い付き合いで、小さい頃から知っている仲だが、昔は料理がへたくそだった。
それをしつけてここまでうまくさせたのは、一重に俺の努力と、相方のそれに応えようとする信頼だ。
大きくなったなぁと、ついつい、孫を見るような気分になってしまう。
「どうしたの光貴さん」
「いや。30過ぎると振り返ることが多くなるなぁって」
「どういうこと?」
「お前も30過ぎればわかるって」
「ふうん?」いまいち、理解できないと言った風に春弥が首をかしげた時。
「みつー!」店の戸が大げさに開く。定休日の看板出しておいたはずなんだけどな。
まあ、そんなものは物ともせずに、遠慮なく入り込んでくる奴の心当たりは二人しかいない。俺のことをみつと呼ぶ奴の心当たりはひとりだけ。
「おい猫汰。お前いつになったら定休日って文字読めるようになるんだ?」
「店のなかあったかーい」
「聞けよ」
「す、すみません。俺は一応止めたんですけど……」
「あれ。彼氏さんもいる。こんばんわー」
「あおは……じゃなくて春弥さん、こんばんわ」
初々しい高校生カップルが肩をならべて敷居をまたぐ。両手にはビニール袋と紙袋をさげている。
「どうしたお前ら。夕飯作ってほしいのか?」
「ちがうよー。ちょっと野暮用。はいこれ」
「ん?なんだよこれ」
「夏休みで旅行に行ったときのおみやげ」
ずっと渡し忘れてたんだよねーと言いながら、猫汰が持っていた紙袋を光貴のほうへ差し出す。
受け取り中をのぞくと、ラブリーパークのキャラクタみやげと、パックされた干物が入っていた。
「何か月前のみやげだよこれ。前きたときに渡せよ」
「だってー、来るたび持ってくるの忘れちゃうんだもーん」
「みやげを渡そうって相手に適当すぎだろ。
彼氏のことならパンツの柄まで全部覚えてるくせに」
「え?猫汰さん。俺のパンツの柄全部わかるの?」
「ななななに言ってるのみつ。そそそそんな俺がまるでダーリンのおうちを掃除するたび毎回パンツを物色してるみたいじゃない。ちちちちちがうのダーリン。俺はちかって、誓ってそそそんなことは」
犯行が口からもれてるぞ。
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