双子は顔を見合わせると、「「おじゃましましたー……」」大変がっかりした様子で龍児の両腕をつかんだ。そのまま、目を白黒させる龍児をひきずり、退場していく。

一瞬、龍児に懇願の目を向けられたが。

「……がんばってねー」

猫汰がお手上げならどうしようもないので、とりあえず手だけ振っておいた。



ときどき、凍るような寒さが訪れる、11月はじめ。

週に一度の定休日。店の小さな黒板を下ろし、チョークで書いた白い文字を消してから、「うーん」光貴はうなった。

「どーっすかなぁ……」

「みつきさーん。どうしたのー?」うなっている内に、店の奥から春弥が顔をのぞかせる。光貴がなかなか戻らないので気になったのだろう。

「ああ。春弥。ちょうどよかった」黒板から目をそらして、ちょいちょい、相方を手招きする。

「今さ、週変わりの献立決めてるんだけど」

「うん」

「……いまいち、ぱっと良いのが思いつかなくてな」

秋も深まり、冬の近いこの時期は美味いものが多い。その所為で、逆に品目が決まりにくかったりする。

春弥もうんとうなってから、「無難に、鍋は?」ひとつ、提案する。

うーん。やっぱり鍋だよな。俺もそう思うんだけど。

「よし。ここは鍋に絞り込もう。で、問題は、なんの鍋にするかだよな」

「そうだねー……」

輪郭は決まったけれど中身が真っ白で、けっきょくふたりで迷う羽目になった。

「豆乳は?」

「どっちかといえば副菜で湯豆腐つくりてぇな。鍋と酒にあうやつ」

「じゃあキムチ」

「キムチも副菜がいいなぁ。白菜からつけた奴つくるかー」

「寄せ鍋でどうでしょう」

「うーん。寄せ鍋は他の品目にインパクトで負けそうだなー。仮にも鍋はメインだしなー」

あれこれ話し合ったが、結局往生してしまう。その内に腹も減ってきて、先にメシを食おうという話に流れた。

今日は春弥がつくったあんかけチャーハンがまかないだ。ひとくち食べて、何時ものことながら感動する。

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