「ああ……なるほど、龍ちゃん読解力ないもんね」

「龍児は会話が不自由だもんな……そこが面白いんだけど」

「暗記も限界あるしなぁ……」

「中学のときはなんとかなっても、高校はもうお手上げかもね」

「実際、国語の点数も10点だしね……」

「つうわけで、こいつに社会だの英語だのやらせても無駄だって。
早急に必要なのは、これだよ。これ」

そう言って、猫汰が自分のカバンから取り出したのは、以前解いた現代国語の小テストだ。

「笑わせてもらったお代に、お望み通りちょっとだけ勉強みてやるよ。こっちおいで?りゅーちゃん」

にやにや笑う猫汰の傍に、行くか行かないか、迷っているようだ。ちらりと、豪星のほうに目くばせさせる。

さて。どうしたものか。うーん。

いや、実際猫汰の教え方は上手だし、教えてもらって損はないかも。

「龍児くん。猫汰さん教えるの上手だから、ちょっとだけでも聞いてみたら?」

「……わかった」しぶしぶ。豪星が言うなら。という感じで、龍児が猫汰の対面に座る。

「さーてそれじゃあ、この一年の範囲の復習小テストでお勉強をみてあげようか。りゅーちゃんは先に小説部分を読んで、そのあと俺が問題を読み上げたら、答えていってね?」

こくりと頷き、龍児が小説文を読む。

「おわった」というなり、猫汰がテストを取り返した。

「それじゃ、第一問。
真知子は卓也に寄り掛かった。このとき、時間が止まればいいのにと、真知子は夜空の星々に願った。

この一節における、真知子の気持ちを代弁せよ」

「時計をへし折った」

「…………?
ごめんりゅーちゃん、もういっかい言ってくれる?」

「時計をへし折った」

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