「蒸しパン食べたい!猫汰さん!蒸しパン作って!」
「う、うん。分かった」
そんなものでいいのかー。と、首をひねりつつ作った猫汰の蒸しパンは、想像以上に美味しくて。その後もせがみまくって、――――つい。
「……ねー豪星くん。ちょっと太った?」
「えっ」父親に指摘された通り、食べ過ぎて太った。
*
夏休みも残りわずか。
俺こと、原野俊也(しゅんや)は、炎天下のした途方に暮れていた。
手にはスマホ。画面は、この国でいま一番有名な連絡用アプリ、ライソ。
そこに表示された「おともだち」こと、「神崎猫汰」からの通知。
これを見るたび、おともだちの定義とはなんなのか真剣に悩む。
「はー……」
一度、既読つけずにスルーしたら死ぬほど殴られた事があるので、イヤイヤ通知をひらく。
やだなー今度はなにかな。あの人から連絡くると、大抵めんどくさい事に巻き込まれるんだよね。
メールを開くなり「げっ」悪態を洩れる。画面のライソには『今から30分後に駅前のスターパックス集合』と書かれている。
通知きたのがさっきで、今から駅前のスタパ、30分後っていうと……ぎりぎりじゃないか。
もし間に合わなかったらどうするつもりだったんだろう。
いや。つもりもなにもないな。殴打一択ですよね。
ていうか、あの人なんであんなに強いの??
俺、一応運動部なのに、この前「態度が気に入らねぇ」とか言って投げ飛ばされたんだけど。どこの筋肉使ってんの??
それはさておき、こうなっては直ぐに駅前のスタパへ向かわなければ。
……あーあ。今から映画見に行こうと思ったのになぁ。
自転車を方向転換させ、全速力でスタパに向かう事30分後。
「ど、どーも神崎さん……っ」息を切らす原野に向かって「おせーぞ」一撃が飛ぶ。
「おい原野ぉ。俺が30分後に来いっつったら、お前は10分前に着席して待ってんのが常識だろ?」
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