「蒸しパン食べたい!猫汰さん!蒸しパン作って!」

「う、うん。分かった」

そんなものでいいのかー。と、首をひねりつつ作った猫汰の蒸しパンは、想像以上に美味しくて。その後もせがみまくって、――――つい。

「……ねー豪星くん。ちょっと太った?」

「えっ」父親に指摘された通り、食べ過ぎて太った。



夏休みも残りわずか。

俺こと、原野俊也(しゅんや)は、炎天下のした途方に暮れていた。

手にはスマホ。画面は、この国でいま一番有名な連絡用アプリ、ライソ。

そこに表示された「おともだち」こと、「神崎猫汰」からの通知。

これを見るたび、おともだちの定義とはなんなのか真剣に悩む。

「はー……」

一度、既読つけずにスルーしたら死ぬほど殴られた事があるので、イヤイヤ通知をひらく。

やだなー今度はなにかな。あの人から連絡くると、大抵めんどくさい事に巻き込まれるんだよね。

メールを開くなり「げっ」悪態を洩れる。画面のライソには『今から30分後に駅前のスターパックス集合』と書かれている。

通知きたのがさっきで、今から駅前のスタパ、30分後っていうと……ぎりぎりじゃないか。

もし間に合わなかったらどうするつもりだったんだろう。

いや。つもりもなにもないな。殴打一択ですよね。

ていうか、あの人なんであんなに強いの??

俺、一応運動部なのに、この前「態度が気に入らねぇ」とか言って投げ飛ばされたんだけど。どこの筋肉使ってんの??

それはさておき、こうなっては直ぐに駅前のスタパへ向かわなければ。

……あーあ。今から映画見に行こうと思ったのになぁ。

自転車を方向転換させ、全速力でスタパに向かう事30分後。

「ど、どーも神崎さん……っ」息を切らす原野に向かって「おせーぞ」一撃が飛ぶ。

「おい原野ぉ。俺が30分後に来いっつったら、お前は10分前に着席して待ってんのが常識だろ?」

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