「……やっぱり」頬を蒸気させる豪星を、猫汰が睨む。

「ダーリンってさー、いままでずっと、我慢して食べててくれたでしょ?」

「えっ。あ、あの……えっと?」

「いいよ。分かってる。ダーリン優しいもんね。言い出しにくかったんだよね」

いや。どっちかっていうと、流されて言い出しそこなったっていうか……。

「俺、この前ラブリーパークの再現料理つくったとき、あれ?って思って、それから、三択島で、りゅーちゃんに負けた時、ようやくわかったんだけど……ダーリンって、シンプルな味付けの方が好きなんでしょ?」

「………」

えーっと。具体的にはちょっと違うっていうか、かゆいところはもうちょっと上なんだけど、その下をかかれた。みたいな風だけど。まあ些細なことか。

「じ、実はそうなんです」無難な受け答えをすると、「やっぱり……」しゅんと、猫汰が落ち込む。

「ごめんね。俺、ダーリンが美味しそうに食べてくれるって思いこんで、はりきって、凝ったやつばっかり作っちゃって。これからは、ダーリンの好みに合わせてシンプルな味付けで作るから」

「あ、ありがとうございます?」

おや。今すごい事になったぞ?俺、あのメシマズから解放された?

まじかよ。こんな事なら遠慮せず早めに言っておけばよかった。

……あれ?そもそもなんで俺、ずっと遠慮してたんだっけ?

……慣れか。慣れだな。怠慢とか無意識とかいうやつだ。こわいね。

「お詫びに今日はおやつも作るね。なにがいい?」

「……おやつ」

いつもならば身が竦むところだが、落ち着け。解放されているのだ。

解放されたならまだしも、この人、普通に料理作るとめっちゃ美味い。外食顔負けだ。そんな人に、まず作ってほしいおやつと言えば。

「蒸しパン!」

美味しい蒸しパン食べられる!手作りの!

「え?蒸しパンでいいの?俺ほかにも作れるよ?シフォンケーキとか、シュークリームとか、ガトーショコラとか」

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