「「え!?」」鍋を持って戻ってきた姿に、ざっと青ざめる。

先輩はにこにこしている。いつになくイヤミの無い笑顔だ。悪意はこれっぽっちも感じない。

「まー、折角良い写真貰えるしね。このくらいはサービスしてやるって」

「い、いやいやいやいや!」

「お構いなく!?」

「遠慮すんなって」

「せ、せんぱい!」助けを求めて隣を振り向くと、豪星先輩が、明後日のほうを向きながら、うーんと顎に手をあてているのが見えた。

お互い、沈黙すること数秒。

「うん。遠慮せずに食べていきなよ」

「ええ!?」助けてくれないの!?

「猫汰さん。今日はどんな料理ですか?」

「涼しくなってきたし、特製鍋にしたよ!三人分だから、はりきって作ったー!」

「ははは。はりきったんですね。それはいいですね」

いやいや!?はりきらないでくれる!?

「いやーなんていうか、長い間苦しんできたものを誰かと味わえるのって、ちょっと小気味いいよね」

「えー?ダーリン、なんのはなしー?」

「みんなで鍋がつつけてうれしいなって意味ですよ。ねー?ふたりとも」

そういって、さわやかなくせに、「ざまあみろ」風に笑う、豪星先輩。

「ううう…………!」

この人、実は性格悪くないー!?



へんじとけんじが、勉強を教わりに来てから、次の日。

「結局あいつら、三日もしたら来なくなったねー」豪星の家に入り浸りの猫汰が、三日で消えた後輩二人の不在に愚痴をこぼす。

「そうですねー」まあ、分からないでもない。

勉強後にセットで出て来るおもてなしがみぞおちに効いたんだろう。

思いっっきり。

「根性のねぇやつらだ」

「いやいや。三日とも完食し切ったので、けっこう根性あると思いますよ」

流石龍児の友達を張るだけはある。

「え?どういうこと?」

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