「いいえなんでも。それより、これがきっかけで、あの二人の成績が上がると良いですね」

「えー?なになに?ずいぶんあいつらの面倒見がいいんだねー」

「ええ。まあ」

あの二人の成績が上がれば、世話焼きな彼らのことだ。

きっと、以前から成績が伸び悩んでいるらしい、龍児の面倒を見てくれるだろう。

教えられることには素直な龍児のことだ、きっと、彼らに感化されて、成績に良い方向に進むだろう。そうすれば、きっと喜ぶ。

大事な友達が嬉しいのは、俺も嬉しいから。

……なーんて、勉強を教えながら下心が湧かせていたのを、きっと二人は気づいていないだろう。

もちろん、この人にも言う気はない。

「ダーリン?どうしたの、にやにやして」

「いいえ、なんでもありませんよ」

恋人の悋気は怖いからね。



中間考査が終わって、数日後。

「お……おお!」

「上がった!」

お互いの順位表を興奮気味に掲げながら、「よっしゃー!」歓喜の声を上げる。

「20位くらい上がったぞ!」

「すげー!!これは流石に感謝せざるを得ないな!」

「すげーもん三日も食わされたけどな!!」

「まあ20位上昇に比べれば妥当な罰ゲームだって!」

代償のそこそこ大きい勝利に喜び勇んでいると、「あ、龍ちゃーん!」かたわらを、とことこ、龍児が横切る。

「龍ちゃんは結果どうだった?」呼び止めて肩をつかむと、相手がぴたっと足を止めた。その横に、けんじも張り付く。

「お前一学期、俺らよりもやばかったもんな」

「でも、今回はもっと頑張ってたもんね、さすがに成績上がったでしょ?」

「おい龍児?どうなんだよ」

「…………」

「あれ?どうしたの龍ちゃん。顔真っ青だけど」

「おい、龍児、なんとか言えよ」

押し黙った龍児の肩を、けんじが軽くこづく。「あ!」その拍子に、龍児の手元からひらりと、一切れの紙が落ちた。

成績表かな?

拾い上げて目を通すと、案の定だ。内容は…………。

…………。

「なんだよへんじ、変な顔して。それ龍児の成績表?どれどれ……」

「み、みるな!」

「…………えっ」

「…………」

お互いの間に、長くて重い沈黙が落ちる。

「龍ちゃん……これは流石に」

「まずいんじゃね……?」

普段のように、「龍ちゃんはばかだなぁ」と、笑えない事実が、紙の上に浮かんでいる。

「!」

龍児は、こちらの手から紙を奪うと、恥ずかしそうにうつむき、走り去って行った。

【覚醒編/いつ編完】

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