「やる気になるかなー」

帰宅してあー疲れた。なんて言った後に、さてやるぞなんて、思えない自分が想像できる。

それぞれ文句を呟く自分たちを、「ばぁか」猫先輩がぴしりと一蹴する。

「やる気なんてまってるもんじゃねぇだろ。やる気がなくてもやるのが本当のやる気だっつの。
それに、始めちまえば半分終わったも同然だろ?あとはやるしかないんだから。
お前等の場合は、そのやる気を家で習慣化させることのほうが、勉強どうこうより大事なんだよ」

「うっ」正論すぎて、またぐうの音も出なくなる。

「で、でも、ゲームとかテレビとかあるし、スマホだって……誘惑多いし」

「なにかの所為にするな。
自分ちなんだから、環境なんていくらでも変えられるだろ?ゲームは鍵付きの箱に入れておくとか、テレビは親に見張ってもらうとか、スマホは預かっててもらうとかよ。
そういう工夫も努力もしねーで道具の所為にするとか、片腹痛いんですけどー?」

「ううっ」

「あと、勉強する時は今日みたいに何時間も続けてやるんじゃなくて、20分やって3分休憩するとか、自分に合ったリズムも見つけておけよ。
いきなり何時間も続けたって、息切れするし、一日勉強して次の日は一日休むとかじゃ、意味ないだろ?」

「ううー」

「素直に従っとけ。勉強が出来るやつってのはな、大体素直なやつなんだからな」

「……彼氏みたいな?」ちらりと横をうかがうと、素直そうなひと代表、豪星先輩が、きょとんと首を傾げた。

同じく猫先輩が彼氏を振り返って、「まーねー」自慢気に胸を張る。

「肝に命じておきます……」

「そんじゃ、俺ら帰りますんで……」

なんだか、今日一日で色々な情報を頭につめすぎて、ぐるぐるする。

言ったそばからなんだけど、今日は帰ってすぐ寝よう。

「あ、ちょっとちょっと、待ちなよ」

カバンをまとめ始めるのと同時に、猫先輩が再び廊下へ引っ込んでいく。何事かと思いきや。

「ご飯、お前らの分も作ってやったからさー、食べていきなよ」

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