「うっす。了解っす」

説明を聞き終えた弟が、まじまじと教科書をながめはじめる。どうやらやる気が起きたらしい。自分も自分の教科書に目を戻して、もくもくと公式を暗記し、解けそうなものを、先輩から教わりながら解き進めていく。

「ただいまー。みんな、勉強すすんだ?」

いつにない集中力で勉強している最中。コンビニに出かけていた豪星先輩が帰宅する。机のそばまでくると「はいこれ。頼まれてたおかし」ふくろごと、お使いのしなを渡してくれた。「すんません」一礼して受け取ると、再び机に向かう。

「あれ?なんか、出かける前より、ふたりとも随分集中してますね」

「ふふん。俺の指導がさっそくきいたね」偉そうに猫先輩がふんぞり返る。それを見た豪星先輩が「ああ。なるほど」同意を示した。

「猫汰さんの教え方、分かりやすいですからね。俺も随分助けられました」

「えー?それはもともと、ダーリンがのみこみ早いからでー、俺のおかげっていうよりダーリンのおかげっていうかー」

はいはい。惚気のろけ。

がりがり、ノートに書きこむかたわら、「俺も勉強して良い?」豪星先輩が隣に座って、自分のノートと参考書を開く。「もちろんっすよ」家主の家に押しかけているのはこちらだというのに、相変わらず物腰がおだやかな人だ。

龍ちゃんは、先輩のこういう所が好きなのかなぁ、なんて、ふと思う。

「どうかした?俺の顔になにかついてる?」

「ん?いえいえ。ちょっとぼーっとしてただけっす。それより先輩も、聞いてる感じ、勉強出来るほうなんすね」

「うーん。出来ないほうではないかな。猫汰さんのおかげで」

「そっすか。それじゃ、わかんないところ出たら、先輩からも教えてもらっていいっすか?」

「ああ、いいよ。俺で良ければ」

分かる範囲なら、なんでも聞いてよ。と言って先輩が笑う。

彼氏と違って、ここに見返りを求めないところが、人の良さを伺わせた。

猫先輩って性格悪いから、かえって、豪星先輩のこういうところに惚れたのかなぁ、なんて、再び考える。

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