「あ、そっか。金持ちだったねあの人」

へー、ワンルームかな?とか、先輩ひとりで暮らしてんのかな?とか、色々感想を言い合っていると、「誰かいるんですか?」扉ががちゃりと開いて、家主がひょっこり顔を現した。「あ」「あ、どうも」お互いの顔を見合わせるなり、先輩がびっくりした顔をする。

「どうしたの?へんじ君、けんじ君、こんなところで。ここ、おれんちだよ?」

「さっきたまたま先輩たち見かけて、好奇心で近寄っちゃいました」

その、好奇心ついでに、先輩が開けた扉から中を覗く。「へー」「おお。こんな風になってるんだ」自分も弟も産まれた時から一戸建て住まいなので、賃貸の部屋を覗くのは初めてだ。興味しんしんにひとなめしてから、「先輩せんぱい、中はいってもいい?」承諾をこうと、「え?ああ、べつにいいよ」すぐに了承を得た。

「わーい!」「あざっす!」意気揚々と中に入り込み、再び中を見渡す。左手に靴ばこがあって、小さな廊下とキッチン。その向こうに扉があって、あそこが部屋なのだろう。

「先輩ってひとり暮らしなの?」

「ううん。違うよ。父親とここに住んでるんだけど、親は今パチンコに行ってる」

「へー」こんなのほほんとした人の父親でも、ギャンブルとかするんだ。どんな親なのか想像つかないな。

ん?あれ?父親だけ?母親は?

……ああいや。ファミリーでワンルームなんて住まないか。やぶへびだな。詮索しないでおこう。

「だーりん?どうしたの?セールスだったら俺が追い払ってあげるよー……って、なんでいるんだよおまえら」

狭い廊下で話し合っていると、奥の扉から猫先輩が現れた。こちらを見るなり嫌そうに眉をしかめる。

「どーも先輩」

「お邪魔してまっす」

「文字どおり邪魔だっつの。かえれかえれ」

「まあまあ猫汰さん。せっかくなんだしそう邪見にしなくても。お茶くらい……あ、ごめん。コップがないや」

「いいえー、おかまいなくー」

たしかに。ワンルームに二人暮らしならコップなんてないよね。

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