文化祭が終わり、三日もたてば、テストの気配が校舎にたちこめる。
「なーけんじ。そろそろ中間テストだなー」気だるい声をふかしていると、「だなー」目の前でスマホをいじっていた弟が、同じくけだるそうに同意を示す。
「学校って、勉強とテストさえなければ、夏休みもあるし文化祭もあるし龍ちゃんもいるしで、結構楽しい場所なのになぁ」
「言えてる言えてる。……あれ?そういえば龍児は?」
「さっき帰ったよ。ウチ帰って勉強するんだって」
「へー。あいつバカなくせに真面目だよなー」
「むくわれないとも言えるけどねー」
だらだら喋っている内に、教室からひとり、またひとりひとが消えていく。うちに帰ってテストの勉強をするのか、それともはなから諦めて遊びに出かけるのか、帰路の予想は様々過ぎて予測がつかない。
こうしていてもなんだから、俺もそろそろ帰るかなと、腰を上げれば、同じタイミングで弟が席を立つ。
「一緒に帰ろうぜ」と言われたので、「お前部活は?」と確認すれば、テスト期間中だからないよと笑われた。それもそうだな。
二人そろって教室を出て、廊下を真っ直ぐ歩いて玄関に向かう。靴をはきかえたところで。「あーあ」再びけだるい声が出た。
「なーんかこのままウチ帰るのもおっくうだなー。勉強めんどくせー」
「いいじゃんべつに。どうせ兄貴また、勉強しながらゲームやるんだろ?」
「気分の問題だよ。きぶん」文句を言いつつ校門を出て、自転車に乗り込み自宅へ向かう。その途中。
「お」「あれ?」どちらともなく声がもれた。帰宅途中、ちょうど5メートル離れた距離に、校内有名ホモカップル、もとい豪星先輩と猫先輩がいたのだ。
二人はおしゃべりに興じながら、かたわらに建つ年季の入ったアパートへ入って行った。どうやら、あそこがどちらかの住まいらしい。
「へー、ここ、先輩のおうちなんだ」興味しんしんで近寄り、自転車から降りて窓に近づく。
「どっちの家だろう」
「そりゃお前、豪星先輩のほうだろ。イケメン先輩がこんなしなびたアパートで暮らしてるわけないって」
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