そんな風に、父さんは繰り返し言っていた気がするけれど。
父さんのいう事なんて聞きたくなくて、ずっと聞かないフリをしていた気がする。
でも結局覚えてる。
みじめなもんだ。子供なんて。
「ねぇ、知ってるダーリン」物思いにふける豪星の隣で、猫汰が肩を合わせてくる。
「このキャンドル、好きな人と一緒に火が消えるとこを見ると、卒業しても一緒にいられるんだって」
「え?そうなんですか?初めて知りました」
「俺も最近知った。女の子たちの間で主流のおまじないらしいよ。まあ、信憑性はないんだけどね」
「へぇ……そうなんだ」
「もー。ダーリンたら、こういう時は、そうですかー、これで俺たちずっと一緒にいられますねって、かっこよく口説くとこでしょ?」
「そんなもんですか?」
「当たり前じゃん」
「うーん……」こちとら当たり前というわけでも。
……いや。どうだろう。自分の気持ちも随分、変わってきているしな。
最近はとみに、それが顕著だ。
「……そうですね。俺たち、これからも一緒にいられると良いですね」
「え?ほ、ほんと?ほんとに?」
「自分で言ったくせになんで疑問形なんですか」
「え、や、だ、だって。流されると思ってたっていうか、ダーリンがデレるの珍しいっていうか……その、直球で言われると照れるね」
「何時も直球なひとが何言ってるんですか」
「う、うん……」
猫汰が照れるのも珍しい。さすが常にないひとときだ。稀なことが起きるのだろう。これなら確かに、まじないのひとつやふたつ叶うかもしれない。
「どうしたの?」
「いいえ。なんでも」
「そう?疲れちゃったのかな?けど、今日たのしかったねーダーリン」
「そうですね」
「また猫メイドダーリンを編集してアルバム作るから、いっしょに見ようねー」
「……自分のコスプレ集見せられても複雑なんですけど」
「自分のコスプレ見せられて複雑そうにしてるダーリンが見たい」
さようですか。
32>>
<<
top