時刻は15時過ぎ。客足は途絶え、学校中の出し物が閉店の準備を始めている。あとは後夜祭を待つばかりだ。
16時に合わせて校庭へ向かうと、夕暮れのグラウンドで、既に後夜祭が始まろうとしていた。
小さく組んだマキに火をくべ、学校が用意したキャンドルを生徒がひとりひとり貰って火をつけ、祭りの名残を愉しむ。静かなお祭りだ。
豪星と猫汰もさっそく、キャンドルをひとつずつ貰うと、その辺りに座ろうとして「ねぇダーリン。ちょっと」止められる。
「どうされました?」
「うん。こっち。ちょっとこっちきて」猫汰が豪星の腕を引っ張り、向かった先は校舎の中。豪星の腕を引いたまま、猫汰がどんどん階段を昇っていく。
「猫汰さん?どこへ行くんですか?」
「屋上」
「え?屋上?」
「うん。さっき鍵をくすねておいたの。二人っきりになれる場所、いこ?」
言い終わる間に最上階へたどり着き、猫汰が鍵を取り出して屋上の扉を開く。「わー……」初めて踏み入れる屋上の空は、地面よりも高く広く、星が綺麗だ。そこに座って、猫汰がキャンドルと共に貰ったマッチで火をつけると、二人、並んで空を見上げる。
「空、綺麗ですね」
「うん。キャンドルも綺麗だね」
吸い込まれそうな夜空を眺めながら、ふと、去年の今頃を思い出す。
猫汰がとつぜん編入したばかりで、なにもかもが慌ただしく変化していた時期だ。
正直、彼の所為で、一年前の文化祭で、自分がなにをどうしていたか全く思い出せない。
けれど、その元凶とこうして隣り合って、ぼんやりキャンドルを置き、今では空を眺めているなんて。
人生、なにがあるか分かったもんじゃないな。
―――そういえば、ずっと昔、父親が似たようなことを言っていたな。
なんだったっけ。宝くじがどうとか、そんな話だったような気がするけれど。
……なんだったっけ。
「大事なことだよ。僕みたいな父親をもっている君には特に。だから、よく覚えていて」
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