「離してダーリン!!ちくしょう!!アイツ今日こそぶち殺してやる!!」
「だめです!他のクラスの展示壊しちゃだめですー!!」
「あーあ。だから気を付けろって言ったのに」後ろからぽつりと、へんじの声が浮かんで消えた。
***
ついでに他の出し物を色々見て回りつつ、教室に戻ると、「やあ。猫汰。豪星くん」詩織が着席して待ち構えていた。「しおりちゃーん」身内が遊びに来てくれたのがうれしいらしく、不機嫌も忘れて実兄に寄り添っている。
詩織の給仕も話し相手も大体猫汰がこなし、しばらく兄弟水いらずで楽しんだあと、詩織は満足げに席を立った。「それじゃあ」と言って、教室の出入り口に向かう。
「ごちそうさま。猫汰。豪星くん。楽しかったよ」
「いえ。とんでもないです」
「それじゃあ二人とも、僕はもう一回ぐるっと校内を見てくるよ」
「はーい。楽しんでいってねー」
詩織が去っていくのを見送ってから教室へ戻ると、あちこちで弁当を開いているクラスメイトを見かけた。そういえば、もう昼過ぎだ。豪星は蒸しパンのおかげで腹持ちしているが、猫汰はそうでもないだろう。
「猫汰さん。お客さん少ないですし、今のうちにお昼どうぞ」食事を促すと、「うん。そうだね」猫汰がこっくり頷き、自分のカバンへ近づいて行った。
その時、教室に扉が再び開いた。「あ、いらっしゃいませー」来客だろうと駆ければ。
「よー!」
「あ、彼氏さーん!」
見知った顔がふたつ。並んで手を振っていた。
「光貴さん!春弥さん!」
「遊びにきたぞー」
「彼氏さん、可愛い恰好してるね」
「いえいえ。そんな……」
二人と談笑しつつ、席を案内していると。「あれ?みつとハルじゃん」お弁当をもぐもぐほおばりながら、猫汰がひょっこり顔を出す。
「猫さんこんにちはー」
「おー。ナースとかマニアックなもん着てるな」
「なにいってんのみつ。白は定番でしょ?」
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