「どうもどうも先輩たち。さっきぶりですー」
「どーもへんじ君。俺とダーリンふたりで入って良い?」
「いっすよ。今ちょうど暇だったんで。どーぞお入りくださーい」
「あ。そういや、龍児が中にいるんで、気を付けてくださいねー」
「ん?龍児くん?分かった?」なにを気を付けるんだろう?
入場料ひとり100円を払ってお化け屋敷の中に入る。
中は、段ボールで仕切りを作った簡易迷路になっていて、道に沿って恐ろし気な展示物を見ていく仕様だった。
ひー!だの、ぎゃー!だの、人の叫び声がBGMに流れている。
「なーんだ。こんなもんか」迷路に沿ってそうそう、猫汰が馬鹿にしきった声をひびかせる。
「本格とかうたってるから、なにがどう本格かと思ったけど、段ボール積み上げてちょっと照明落としただけじゃねーか。
本格っていうか低俗って感じだよねー?名前負けっていうかタイトル詐欺っていうかさぁ。
お。こんなところにこんにゃくぶら下げてら。ははは。まじでいるのかよ。お化け屋敷でこんにゃくぶら下げる奴。これってさー、あとでスタッフが美味しく食べるの?はははうけるーハハハいってぇ!!!」
展示をあざ笑っていた猫汰が、突然顔面ごとすっころぶ。
目線を下に下げると、ついたての下からにゅうと手が伸び、猫汰の足を掴んでいた。
え。なにあれ。
ぞっとしたのもつかの間。ひょっこり、手の隣から見知った顔がのぞき見える。龍児だ。
どうやら、猫汰の足を掴んで転ばせた正体は彼らしい。
「…………」
「…………」目が合う事数秒。相手がおもむろに、ぐっと親指を上げた。
いや。龍児くん。そんな「してやったぜ!」みたいに示されても……。
「……てっめぇえええええええええ!!」復活した猫汰が、龍児の手に掴みかかろうとするが、さっと、ついたてから伸びた手が消える。「まてこのやろう!生かして帰さねぇからな!!」そのまま、ついたてをけ破ろうとする猫汰の背を、「ちょ!駄目です!!」慌てて抑える。
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