父親が、まじまじ、豪星と猫汰の姿を観察する。そこで漸く、そういえば自分はメイドで猫汰はナースをしているんだったと思い出す。

……うわー。俺たち、この姿で校舎を追いかけっこしたのか。後悔先に立たずだな。

「なんで豪星くんが猫メイドで、猫ちゃんがナースなの?」

「俺たち、クラスの出し物でコスプレ喫茶してるの」

「なるほどね。それじゃ、豪星くんたちの出し物に遊びに行こうかな。案内してくれ」る?と言い切る前に。「ねこたー!」再び向こうから呼ぶ声がひびく。それを聞くなり「ひぃ!!詩織ちゃん!!」父親が中庭の木陰に隠れた。

「く、く、来るだろうとは思ったけど、出くわすの早すぎだろ……っ!あぶねぇ見つかるとこだった!!」

「じゃあ来るなよ」

「息子の文化祭に!行ってみたかったの!!……ああもう。ダメだなこれは。豪星くん。猫ちゃん。残念だけど僕もう帰るね!」

ああそう。と、言う間もなく、「じゃあねー!」父親が木陰から飛び出し、走り去って行く。「じゃあねーおとーさまー」猫汰がひらひら手を振る相さに「猫汰。豪星くん。こんなところに居たんだね」猫汰の兄こと詩織が、微笑みながら近づいてきた。

「お前のクラスに遊びに行ったんだけど、二人とも外出していると言われてしまってね。探してたんだよ。休憩中かい?」

「……まあ、そんなところです。そろそろ戻ります」

「そうかい。それじゃあまた僕も行こうかな」

その前に、色々見て回りたいものがあったので、寄ってから戻るよと言った詩織とその場で別れ、猫汰と一緒に教室へ戻る。途中。

「あ。ここりゅーちゃんたちのクラスじゃない?」一年校舎の途中で、猫汰がふと声を上げる。

「ああ。ほんとですね」教室の扉には、「本格!お化け屋敷」という張り紙がされている。どうやら、双子の企画は無事通り、お化け屋敷を開催したようだ。

「ちょっと覗いてく?」猫汰が、豪星の袖を掴んで中へ誘う。

「そうですね。戻る前に入ってみましょうか」誘いに乗って、一年教室の扉を開けると。「いらっしゃーい!……って、なぁんだ先輩たちか」受付をしていたへんじに声をかけられた。

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