「「どーもどーもー!」」聞きなれた声がふたつ、外から飛び込んでくる。あの声はへんじとけんじだ。……と、いうことは。
「ごうせー!」あ、やっぱり。龍児くんもいる。
双子に、半ば引きずられるような体制だった龍児が、豪星を見るなりぱっとほころび駆け寄ってくる。そして、豪星を上から下まで一瞥するなり、「にあうな、豪星」感心した風に言う。
「ええ。似合うかな」褒められているんだろうけど、これが似合っても複雑だ。そんな胸中とは裏腹に「似合う。かわいい」龍児はこくこく、感心しきりだ。
「ほんとだー。豪星先輩、結構似合ってるじゃねっすか」
「ほんとほんと。たたないけど」
たっても困るよ。
「おいこらぁ!!」後輩としゃべくりしている間を、猫汰が突風のごとく割り込み、ぐいと、豪星を背後に押しやった。とたん、龍児の眉間が2センチ下がる。
「おい。りゅーちゃんコラ。なに人の彼氏視姦してんだ??三千年はえーぞ??」
「しかんってなんだ」
「あとで教えてあげるよ龍ちゃん」
いやいや!教えてあげないで!
「えーと、えーと。猫汰さん。だめですよ。お客さんなんですから、喧嘩腰になっちゃ……」
「……あー。うん、そーだねー」豪星に諌められた猫汰が、嫌そうにうなずき、「それじゃお客さまー。こちらどーぞー」空いている席へ三人を案内した。三人を座らせると、簡易厨房へ行って水を注ぎ、再び三人の席へ戻って、「はいへんじ君、はいけんじ君」まず双子に水を置いて「はいりゅーちゃん。……おっと手がすべった!!」最後に、龍児の顔へ水をぶちまけた。「わあ」思わず声が出るほど、スムーズな挑発だ。
「………ころす」眉間のしわをより刻んだ龍児が、地を這うような声でつぶやく。猫汰と龍児が、お互いの胸倉をつかみ合う。一秒前。「ふたりともだめだよー!」猫汰を背後から抱きすくめる。龍児といえば、双子に両脇から引き留められていた。
「ああもう!どうして顔合わせるとこうなるかな!二人とも!だめだよ!今日は文化祭なんだか普段よりもっと喧嘩したらダメだからね!」
「だってダーリン!こいつむかつくんだもん!!開店早々!人の彼氏のコスプレ見に来たんだぜ!?俺じゃなくて!こいつが!喧嘩売ってんだよ!!」
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