「いえーい。完璧きまってるでしょー?」ノリノリで腕を上げる彼の衣装は、いわゆる、白衣の天使。ひと昔前で言うところの白ナースというやつだ。
「よく、ナースの服なんてありましたね……」
「いや。これも作った」
なんて多才なんだ。
「ねー。改めましてこれどうダーリン?俺似合ってるでしょ?」
「ええと……」視覚的に言うならば、本人のハンドメイドだけあって、とても良く似合っていらっしゃるんだけど。それを公言するのはどうかなと……。
とりあえず「サイズがぴったりです」とだけ答えておく。
教室中の生徒が着替え終わると、次に客用の衣装をハンガーにかけて用意し、次に簡易な厨房で飲み物や食べ物の準備を始める。
趣向をこらしているので、飲食は簡単に、レンジで温めるものや、いれて直ぐに飲めるものばかりだ。担当は原野と委員長で、てきぱき、物の配置に指示を出している。
準備を開始してから、30分後。『全校生徒のみなさんにお知らせします。10時直前となりましたので、各自、催しの開催を行ってください。繰り返します……』校内アナウンスから、開店せよとの告知が入る。
「よーしそれじゃあ、はりきってがんばりますかー!」猫汰の号令に、「おー」小さく答えて、プラスチックのトレイを持つ。
ほどなくして、教室の外ががやがやにぎやかになってくる。どうやら、客が廊下を渡り始めたようだ。
「すみませーん」他校の制服を来た女子がふたり、中に入り込んでくる。「三人いいですかー?」続いて、子供連れの親子が三人、次に老夫婦が二人、どんどんと来客が増えていく。
「はい!おひとりさまで、こちらの席へどうぞ!」
「窓際の席空いてるんで、こっちどうぞー」
慌ただしく給仕している間に、人がはいったり、出たりを繰り返す。それも、1時間を過ぎれば大分落ち着き、席が半分埋まると、半分は空く。くらいの余裕が出てきた。
「よし。そろそろローテーションで休憩入れようか。おーい!みんなー!手ぇ空いてるひとから休憩入ってー!」委員長が厨房から指示を飛ばす。最中。
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