「んー。みつ。これたまご豆腐?」
「そうそう。最近しょっちゅう作るんだけど、客受けよくてさ。やっぱ、まだ残暑厳しいからな。さっぱりして冷たいもん、つるっといきたいんだよな」
「光貴さん。この白和え、クルミが入ってて美味しいです」
「あ。彼氏さん。それ俺のアイディアなんだよ。おいしいでしょ?俺ね、前々から、絹ごし豆腐とクルミって、絶対合うと思ってたんだよね」
相変わらず美味しい光貴たちの料理を堪能しつつ。「そういえばね、今度文化祭があるんだー」世間話が広がっていく。
「へえ。文化祭か。なつかしいなー」光貴が、目を細めて明後日を向く。
「自分が学生だった時のことなんて、もうはるか昔のことのようだな」
「やだー。みつってばおっさんなんだからさー」
「おっさん言うな」
「ねぇ猫さん。猫さんたちの学校の文化祭って、体育祭のときみたいに、父兄や家族以外は参加禁止なの?」
「ううん。文化祭は一般参加おっけーだよ」
「そうなんだ!ねぇ光貴さん。文化祭も行ってみようよ」
「あ?ああそうだな。猫汰。文化祭っていつやるんだ?」
「来月のついたち」
「日曜か。うん。大丈夫そうかな……」光貴がその場を離れて、冷蔵庫に飾られたカレンダーの前に立つ。
「はいそれじゃ、メインディッシュどうぞ」その最中、春弥がオーブンから銀色の包みを取り出し、豪星たちの前に並べて見せた。中身は……わぁ!秋鮭のバター焼きだ!
「はふはふ。おいしーねぇダーリン」
「はふ。はい。美味しいですね」
「良かったよかった。これも俺が作ったんだ。ねえ猫さん。俺も随分料理の腕が上がったでしょ?」
「はふ。うん。ハル、料理美味しくなったよね。ずっと前なんて、砂糖と塩の加減すら分かんなくて、しょっちゅうみつに頭はたかれてたくせにね」
「ははは。懐かしいね」
「……それに比べて、俺ってば」鮭をほおばっていた猫汰が、不意にしゅんとうなだれる。
「どうしたの?猫さん」突然うつむいた猫汰の顔を、春弥が覗き込んだ。つと顔を上げた猫汰だったが、数秒、再び頭をおろした。
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