来る夏休み。猫汰のマンションから程近い駅から、新幹線に乗ってらぷりーパークに向かうこととなり、前日、豪星は初めて猫汰の部屋に寝泊まりした。
久しぶりに入った猫汰のベッドはふかふかで、今更、良い暮らしだなと実感する。
不自由はしていないけれど、とりわけ贅沢もした事がないので、こんな暮らしは少しばかり憧れる。
そして当日。予定通り最寄り駅に向かい、始発に合わせて新幹線に乗り込んだ。
指定席を探して座り、ふうと一息ついたかたわらで、「ねぇねぇ」ふと、猫汰が服の裾を引っ張ってきた。何事かと思いきや。
「あのさ、また、旅行の間は豪星くんって、呼んで良い?」
「ぜひそうして下さい」即座にうなずく。旅先の名前呼びは、願ったりかなったりである。
溜息をつく豪星の隣で、「やったー!えへへ!豪星くん!」猫汰は幸せそうだ。
「そういえば、だっ……豪星くんってさ、ラブリーパーク初めてって言ってたよね?」
「はい。そうなんです」三者面談と同じく。諸事情により行くヒマ無かったからなぁ。
「再三聞きますけど、ラブリーパークって、あれですよね?有名なアニメ映画を元に作った遊園地なんですよね?」
「そうそう。国民的アニメーション映画製作会社の、株式会社ラブリーが起こしたテーマパークだね。ほら、三匹の猫とか、二羽のカラスとか、おたまじゃくしとカエルとか。かみさまたまごとか、お金とあひるとか」
「お金とあひる以外はテレビで見た事あります。特に二羽のカラスとか、木曜カントリーショーでよく再放送されますよね」
「俺、三匹の猫も好きだよー。よく借りて見るんだー」
「そういえば、体育祭のお弁当ピックが三匹の猫でしたね」
「そうなの。俺、青猫ちゃんが好きなの。黒猫ちゃんは微妙だけど」
「ははは」
あれこれしゃべっている内に、二時間。いよいよ新幹線は目標駅に辿り着き、豪星たちを吐き出し去って行った。時刻はすでに8時半を過ぎている。
08>>
<<
top