「はい。後輩組これで2点ね」へんじが嬉しそうに、片手の指を折る。なるほど、手が点数板の代わりか。

「う、うー!」唸ってから、「ダーリンはなにもしなくて良いから置物になってて!俺が全部受け止めるから!」ようするに「下手くそはひっこんでろ!」と命令され、それもどうなのかなぁ……と、思っている内に。「あ!」また一点。「う!」また一点。「うわ!」また一点と、徐々に追い詰めらていく。そしてとうとう。

「―――はいそこまで!ウィナー後輩組!」龍児が最後の点を決め、勝敗が決する。

「はいはい先輩。龍児の総合勝ちってことで、文句ねっすよね?」

「……、……!」猫汰が、言葉にならない。と言った風にあえいでから。「―――勝負とか関係ないもん!」豪星にしがみついて叫ぶ。

「おいおい!負け惜しんでんじゃねーよ!」

「そうだぞ!男なら、龍ちゃんみたいに引き際はわきまえろ!」

「うるさーい!」双子の野次を、猫汰が一蹴する。

「ぜったいやだ!渡さないんだから!ダーリンは今から、俺と夕飯に海の幸どっさり食べて、星空を見ながらベンチで語り合って、一緒の布団で寝るんだもん!」

「いやあの、猫汰さん。おれ別の民宿泊まってるんで、最後は無理じゃ……」

「ダーリンは黙ってて!」

「いやいや。黙るのはお前だよ?」突如、横合いから声が割って入る。「うわ!」全員がその場を飛びのくと、いつの間に訪れたのか、猫汰の兄、詩織その人の姿が。

「詩織ちゃん!」猫汰が眉を顰めて、もう半歩あとずさる。嫌な予感がする…!と言った風だ。

「な、なにしにきたの?仕事は?」

「早めに片付いたから、お前のお友達のご両親と一緒に、近くで勝負とやらを眺めてたんだよ。うん。なに。お前が楽しそうでなによりだったんだけどね。
猫汰。頭を使って勝つまでは良かったけれど、誰の目から見ても敗北した状態を、理屈もなく跳ね飛ばそうとするのは、ちょっと頂けないかな?」

「うっ……で、でも。じゃないと、ダーリンが」

「そうだよ?お前の大好きなダーリンをかけて、お前は今日負けたんだよ。
男の子なんだから、潔くひきなさい」

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