「おい」猫汰が仕切りを越えて、龍児に詰め寄る。
「お前。今おれの顔ねらっただろ?粉砕する勢いで」
「してない」
「しただろ?あの砂見てみろ」
「してない」
「龍児くん!」見かねて、二人の間に入る。
「顔に狙って投げちゃだめだよ。あぶないでしょ」
しかりつけると、「……してない」龍児が再三、訴える。
「ボール当たって死ねって思っただけ」
「してんじゃねーかよ!!」取っ組み合いそうになるところを、「猫汰さん!」慌てて止める。コートに引きずり込むと、今度は龍児に向き合う。
「龍児くん、ちょっと力が強すぎるみたいだから、出来れば加減してね!」
「……わかった」
「もういいー?再開するよー?」黙視していたへんじが、再開を告げる。再びコートに立って、けんじがボールを打つ。放物線を描いて、仕切りを越えたボールを、「もらった!」猫汰が華麗に打ち返し、コート線の上に落とした。
「うわ!線の上ねらって落としやがった!」
「きたねぇ!」
「技術が高いって言ってくれる?」反則技って技術高くないと出来ないんだ。知らなかった……。
「それじゃ、今度は俺たちからサーブだね。ダーリン、任せて良い?」
「はい。……よっと」ボールを上げて、向こう側に……。
「あ」拳に当てたボールが、明後日の方向へ飛ぶ。海にぼちゃん!と落ちたボールを、全員の目が追いかけた。
「え。ちょ、ダーリン……まさか」
「バレーって難しいですね」
「やっぱり!初心者か!」
「授業で、ちょっとはやったことあるんですけど」
「それが初心者って言うの!……ええー、どうしよう。ダーリンが使い物にならない」
すみませんね。
「だからと言って、双子と組むなんてごめんだし。えー……どうしたらいいの、これ」
不測の事態に、猫汰の目が泳ぐ。その内に、「あ!」龍児にサーブを決められてしまう。
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