「猫汰さん!写真はともかくパンツはダメでしょ!」

しかりつけるも、相手は明後日を向いたままだ。

「まったくもう……。返してもらいますからね」

「ええー!」

「ええーじゃありません!……父さんめ。よりにもよって一番気に入ってるやつ渡しやがって」ぶつくさ文句を言っていると。「ダーリンそれ返して!!なにがなんでも返して!!」勢いよく腕を伸ばされた。「嫌ですよ!」反射で避ける。

「なんで食いつきよくなってるんですか!」

「一番気に入ってるパンツの!使用頻度に目がくらんだの!!」

「堂々と言う事じゃないよね!?」

「うるさいかえしてー!」

「かえす訳ないでしょ!!」



猫汰と悶着し、疲れ果て家に帰り、父親を怒鳴りつけて眠り、そしてあくる日。

「ごうせー!今度海いこうぜ!」校舎の玄関口に着くなり、待ち伏せしていたらしい龍児が開口一番、叫んだ。

「海?」身近にない単語を聞き返すと、「おう!夏休み近いから、おっさんが豪星誘えって!」経緯込みで教えてくれる。

「海か……俺、行った事ないな」

「俺もない」

「そっか、いっしょだね。うん。じゃあ俺も行くよ。親父さんたちにそう伝えておいてくれる?」

「わかった!」頷くと、龍児はにこにこ笑って去って行った。見届けてから、豪星も教室へ向かおうとするが。

「せんぱいってずりーっすよねー」

「ねー」

両端から突然、へんじとけんじが現れる。「うわ!」驚き身を引いたところで、がっちり、両脇を固められた。

「なになに!?」

「俺ら、あんなにこにこしてる龍児ほとんど見た事ねっすよ」

「ね?可愛いったらないよね?いいよねー先輩。龍ちゃんとしゃべるだけで、あーんなにこにこしてもらって」

「いや別にそんな……」

「なんか秘策とかあんの?」

「そんなものないよ……強いて言うなら、よく話を聞いて、よく喋ればいいんじゃない?」

「うわっ。無難なこと言われた」

そんな事言われても。

「でもまー確かにそうか。それじゃ、今日も親交をふかめてきますか」

「……二人とも。龍児君をあんまりいじめちゃだめだよ」

「なにいってんすか。おれら別にいじめてませんよ」

「ねー?可愛がってるだけだよね」

それを苛めていると言うんじゃ……まあいいけど。

「そういやアイツん家分かったし、夏休みに特攻してみっか」

「いいねそれ。龍ちゃんの嫌そうな顔が目に浮かぶよ」

「まったくだな!」

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