「猫汰さん!写真はともかくパンツはダメでしょ!」
しかりつけるも、相手は明後日を向いたままだ。
「まったくもう……。返してもらいますからね」
「ええー!」
「ええーじゃありません!……父さんめ。よりにもよって一番気に入ってるやつ渡しやがって」ぶつくさ文句を言っていると。「ダーリンそれ返して!!なにがなんでも返して!!」勢いよく腕を伸ばされた。「嫌ですよ!」反射で避ける。
「なんで食いつきよくなってるんですか!」
「一番気に入ってるパンツの!使用頻度に目がくらんだの!!」
「堂々と言う事じゃないよね!?」
「うるさいかえしてー!」
「かえす訳ないでしょ!!」
*
猫汰と悶着し、疲れ果て家に帰り、父親を怒鳴りつけて眠り、そしてあくる日。
「ごうせー!今度海いこうぜ!」校舎の玄関口に着くなり、待ち伏せしていたらしい龍児が開口一番、叫んだ。
「海?」身近にない単語を聞き返すと、「おう!夏休み近いから、おっさんが豪星誘えって!」経緯込みで教えてくれる。
「海か……俺、行った事ないな」
「俺もない」
「そっか、いっしょだね。うん。じゃあ俺も行くよ。親父さんたちにそう伝えておいてくれる?」
「わかった!」頷くと、龍児はにこにこ笑って去って行った。見届けてから、豪星も教室へ向かおうとするが。
「せんぱいってずりーっすよねー」
「ねー」
両端から突然、へんじとけんじが現れる。「うわ!」驚き身を引いたところで、がっちり、両脇を固められた。
「なになに!?」
「俺ら、あんなにこにこしてる龍児ほとんど見た事ねっすよ」
「ね?可愛いったらないよね?いいよねー先輩。龍ちゃんとしゃべるだけで、あーんなにこにこしてもらって」
「いや別にそんな……」
「なんか秘策とかあんの?」
「そんなものないよ……強いて言うなら、よく話を聞いて、よく喋ればいいんじゃない?」
「うわっ。無難なこと言われた」
そんな事言われても。
「でもまー確かにそうか。それじゃ、今日も親交をふかめてきますか」
「……二人とも。龍児君をあんまりいじめちゃだめだよ」
「なにいってんすか。おれら別にいじめてませんよ」
「ねー?可愛がってるだけだよね」
それを苛めていると言うんじゃ……まあいいけど。
「そういやアイツん家分かったし、夏休みに特攻してみっか」
「いいねそれ。龍ちゃんの嫌そうな顔が目に浮かぶよ」
「まったくだな!」
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