猫汰と龍児は、それぞれ自転車に乗り込むと。「それじゃ!スタート!」けんじの合図でいっせに漕ぎだした。優勢なのは……龍児だ。さすが、足が速いだけあって自転車も速い。
これはまた、龍児が勝つんじゃないか。いやいや分からないかもよ。など、三人で話し合って間もなく。
「あ、もう誰か戻ってきた!」へんじが、遠くに気づく。
「誰だ?龍児か?」けんじが目を細めて遠視する。
「……いや、あれ、猫汰さんじゃないかな?」豪星がつぶやくのと同時に、猫汰が目の前で自転車を止める。
「はぁ!はぁっ!はぁ……、ねぇダーリン!りゅーちゃん、げほっ!きた!?」
「いえ。まだです」
「だよね!よっしゃ、勝てるなこれ!」
苦しそうに叫んだのち、「じゃあね!」再び漕ぎ出していった。ほどなくして、「……着いた!」龍児も到着。
「ごうせー!げほっ……あいつは!?」
「5分まえに到着して、二周目に入ったよ」
「え!」龍児が目を開く。
「な、なんで?」大変困惑した様子で、龍児も二週目に入って行った。
しばらくして、「に、しゅうめ……っ、げほげほ!おわ……たっ」再び猫汰が戻ってくる。その速度たるや、一周目の比ではない。
「は、早かったですね猫汰さん」
「うんっ、まあね!」
じゃあ!と言って猫汰が走る。その二分後。「げほっ!げほっ!……うぇっ……!」龍児が二周目を終える。
「大丈夫龍児くん!?吐くほど頑張っちゃだめだよ!?」
「あい……あいつ……は!?」
「猫汰さんなら、さっき着いて、もう行っちゃったよ」
「!?」再び目を開き、「あ!」制止もきかず、飛び出してゆく。
「猫先輩も速いけど、龍ちゃんもはやいなー……」へんじが、呆れたようにつぶやく傍ら。「……いや、なんか変じゃね?」けんじが疑問する。
「あれ。速度は明らか、龍児の方がはやいよな?なのに、なんでイケメン先輩の方が早く到着するんだ?」
言われてみれば……変だな。
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