「だからー、この勝負、一目瞭然だよねって話」

「ええと……」この言い方からするに、ダーリンは俺の料理を選んで、俺が勝つのは当然だよね?だと思うんだけど。

……ええと。

うん。すみません。

「さー、お二方、どっちの方が美味かった?」天ぷらを完食し終えたへんじが、軍配を尋ねる。けんじは、「龍児!」豪星と言えば。

「……すみません。龍児くんの方が美味しかったです」恐る恐る、本音を告げると。

「はぁあぁああああああ!?」猫汰に詰め寄られた。わしづかまれた肩が痛い。

「どういうこと!?なんでりゅーちゃんなの!?ねぇどうして!ねぇ!?」

「いや、あの、……天ぷらが美味しくて」

「あんなのつけて揚げただけだろ!総合点で見ろよ!ふざけんな!ダーリンでも許さねぇぞ!」

「いや、でも、……天ぷらが美味しくて」

暫く、同じような問答を繰り返していたが。

「……ねー。最近気づいたんだけど、ダーリンってさ」ふと、猫汰が口調を鎮める。

「はい?」

「…………いや。なんでもない。此処で聞く事じゃないしね」

矛先を収めると、肩から手を離して背を向けた。向かう先は、勝利した龍児の元だ。

龍児と言えば、一番勝負に勝ったのがよほど嬉しかったのか、珍しく赤らんでいる。それが非常に可愛らしい。

「おい双子!次だ次!いつまでもちんたらしてんじゃねーぞ!!」

猫汰と言えば、一番勝負に負けたのがよほど悔しかったらしく、威嚇(いかく)している。「はいはい」へんじが肩をすくめて、「そんじゃあ、次はあれっすね」けんじが、調理場のもっと向こうを指した。民宿のようだが……入口の前に、たくさん自転車が置いてある。

全員で移動し、自転車に近づくと、すぐ、「レンタルサイクル・一時間300円」の看板に気づいた。

「なにこれ?」猫汰が、意思と用途をへんじに問う。

「だからー。これで二番勝負しましょうって」にやにや笑って、へんじが答える。

「自転車乗ってここからスタートして、どっちが先に三回ゴール出来るかっての、やりましょうよ」

「はー?このくそ熱い日に自転車こげっての?ふざけんじゃねーよ」

「豪星先輩。ちょっと」けんじが耳打ちして、「……ああ、うん」内容に頷く。

「ええと……俺、猫汰さんがかっこよく、自転車乗りこなしてるとこ、みてみたいなー?」我ながら棒読みやばい。

「おっけーまかせて。自転車に乗って、超かっこよく風さばいてくるから」わーちょろい。

「ごうせー!俺もおれも!」あれ。飛び火した。


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