……ああでも、この前作ってもらったラブリーパーク再現料理、サンドイッチにトマトのスープ、肉と魚とマッシュポテトに、バターライス。めちゃくちゃ美味しかったな。
普通に作れば普通以上に美味しいもの作るひとなんだけどなぁ……。まあ、普通の料理作ってたら、男にここまで執着する変人になってないだろうけど。
「最近、龍児も料理にはまってるみたいなんで、油断してると負けますよー?」
「審査するのは、公平に、けんじと豪星先輩ってことで、文句ねっすよね?」
「はっ。上等じゃねぇかよ」
猫汰が悪辣(あくらつ)に微笑み、「ダーリン!ちょっと待っててね!」さっそく、手近な民宿へ向かっていく。龍児も、別方向へ向かって去って行く。
数十分後。二人はそれぞれ、両腕に食材を抱え、「おっしゃ!そんじゃ調理しますかね!」猫汰が、手を叩いて左の調理場へ、龍児は右の調理場に立つ。
しばらく、左右から、ものを切る、加熱する音、更には、良い香りが立ち込めて来た。併設されたベンチに座った豪星たちには、たまらない香りだった。……香りだけなら。
「うわー、めっちゃ良い匂い」
「はら減ったー、はやく食いてぇ」
「野郎メシだけどねー」
「何言ってんだ、外食なんて9割野郎メシだろ」
「そっかー!けんじあったまいー!」趣旨を忘れて、双子が叫ぶ。完全にはらぺこ状態だ。
「はい出来たよー!」先に猫汰が仕上げて、料理を手ずから運び込んでくる。机に置かれたのは、数切れの小さなパン。底のひくい器。中には、具材と油が入っていて、ぐつぐつといまだ煮え立っている。見た目は……随分まともにきたな。
「もー。使えるもの限られてるから、あんまり手の込んだもの作れなかったー」
なるほど納得。
「つーわけで、俺からの一品はこちら、タコとシラスのアヒージョ、猫汰風でーす。添えてあるパンつけながら食べてね」
「すげー!めっちゃ美味そう!」
「猫先輩!このアヒージョってなに!?」
「元は外国の料理で、オリーブオイルににんにくと鷹の爪いれて弱火で加熱したら、香りが立ったところで具材いれんの。さいごにしらすと青ジソやまほど持って出来上がり」
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