「ちっ……!」

「で、勝負の景品ですけど、勝ったら、今日一日、誰にも邪魔されず、豪星先輩と過ごせるってのは、どうすか?」

「はっ!んなの自力でどうにかしてやれんだろ!勝負するまでもねーわ!」

「分かった。それじゃあ、猫先輩だけ、豪星先輩のぬぎたて水着が景品ってことで」

「よしやろう」

「ちょっと待って!俺やだよ!?自分の脱いだ水着が景品になるのやだよ!?」

「まあまあ、先輩。龍児が勝てばいいだけの話ですから」

「やだからね!?」

「まあまあまあ」

双子に丸め込まれつつ、体育祭同様、勝負が開催されてしまう。

さて、今度はなにをやらかすのかと思えば。

「もう12時っすね」

「おなかすいたねー」不意に時計を覗いて、頓狂なことを言い出す。

「おい。勝負どうした」イラついた声で猫汰が言うも。「まあまあ」どこ吹く風だ。

「腹が減っては戦にならぬというか、ついでっていうか、ちょうどいい場所、さっき見つけたんで、勝負はまずそこでやりましょー」

ちょっと来てください。と、先導する双子の背に続くと。しばらくして。

「ここ!ここっす!」へんじが手招き、さっと指さす。そこには、簡易な屋根の下に、水道とガスコンロが置かれていた。傍にたてられた看板には、「お客様用調理場」「ご自由にどうぞ」「調味料貸します」と書かれている。

「へえ。キャンプの調理場みたいなもんか……」猫汰が、感心した声で呟く。

「食材とかも、あっちこっちの民宿で売ってるんすよ。野菜とかも売ってましたよ」

「調味料も、貸してくれるみたいっすよ」

「へえ。結構いいじゃん」猫汰が嬉しそうに言って、から、「つうか、俺に料理勝負しかけるとか、良い度胸してんじゃねーか」自信たっぷりに言い放つ。

「俺、言っておくけど、料理めっちゃ得意だからね?」

うん。得意なことは認めるけど、一般論とすこしだけずれていることを、あえて補足しておこう。

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