出入り口に入った須藤が、受付のおばあさんと会話し、荷物を預ける。豪星たちの荷物も預かってもらうと、「水着は中で着替えてくださいね」ついでに、更衣室を案内してくれた。手早く着替えて、浮き輪を持ち、海水ゴーグルを装着して。いざ。
「海だー!」砂浜へ駆け込む。
「すごい!砂まっしろ!さらさらだ!」
「うみ!つめたい!ごうせー!はやくはやく!」
「うん!ちょっと待っ」
「「はいはい先輩どーもー!」」
身体が、両脇からぐいと引かれる。
「ぐえ!」うめく豪星の両肩に、腕を組んできたのは。
「あれ……、へんじ君とけんじ君?」
「そっすよー!やーっと着きました!」
「よー龍児!この前ぶり!俺らも遊びにきたぞー!」
ジト目で相手を睨む龍児が、「死ね!」忌々しく吐き捨てる。
「やばい!」「うける!」悪態を受けた双子が、ゲラゲラ笑い始めた。
「これこれ!この顔が見たかった!」
「先輩いまの見た!?二人きりで遊べると思ったら、俺ら来て一気にテンション下がった龍ちゃんの顔見た!?」
「ははは……」君たち、ほんとーに楽しそうだね。
「おお。お前らも来たか」追って現れた須藤が、へんじとけんじに手を振る。
「あれ?親父さん。いつの間に知り合ったんですか?」
「うん?ああ、この前ちょっとな。で、その時海に行くんだ。一緒にいくか?って話したら、海は行くけど別行動して、龍児の驚く顔が見たいっていうんで、黙ってたんだよ」
「ふっざけんな!」海面を上がった龍児が、乱暴な足取りで須藤に詰め寄る。
「言えよ!さきに!」
「いや、まあ、そう言うなって」
「ふざけんな!こいつらいるなんて嫌だ!」
「まあまあ。友達なんだからよ」
「違うって言ってるだろ!」
何時にない剣幕に須藤がたじろいでいる。その背後から「たけおさーん。日よけの傘、どこに立てればいいですかー?」沙世の声が響く。しめた!と言わんばかりに、須藤は飛びのき、沙世の方へと逃げ去って行った。残るは、ふんまんやるかたない、龍児のみだ。
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