次の出港は、今から15分後。それまでの時間潰しに、港の売店を冷やかしていると、早速、龍児が食べ物を買いあさり始めた。次は……パンとおにぎりか。

「おい。豪星、ちょっと」不意に呼ばれて、「なんですか?」振り向くと。「お前、旅行の間、あいつの財布の面倒みてやってくれよ」小声で頼まれる。どういうことかと聞き返せば。

「いや。あいつに食い物買わせると、キリがないだろ?だから、最近小遣い制度にしてやったんだ。
で、今日も、旅行用の小遣いだって、三千円渡してやったんだが、あの調子じゃ……」

「……午前には使い切りそうですね」

「だろ?別にそれでもいいんだけどよ、土産でも買うか。ってなったときに、無一文じゃかわいそうだろ?だから、まあ上手く余るように見てやってくれよ。お前が言えば、たぶん、セーブして使うだろうから」

「ははは」相変わらず甘くていらっしゃる。

「分かりました。そういう事なら。……早速言ってきますね。龍児くーん!」

ひとつ100円のおにぎりとパンを、10個ずつ買おうとしていたところを止めて、半分以下にするよう説得する。しぶしぶ頷いた龍児が、5個にとどめた食べ物を持って、売店を離れた。

近くのベンチに腰掛けると、早速、包装を破って食べ始める。

「……よく食べるなぁ」感嘆していると。「育ちざかりなんでしょうね」沙世がとことこ近づいて、にこにこ笑って言った。

「お弁当もね、毎日三重のお弁当食べきっちゃうから、張り合いがあって良いわ」

「……すごいですね」毎日行楽日和だな。

「あ、そうそう。豪星くん。ちょっと立ってくれる?龍児くんも」

「え?はい」促され、立ち上がる。龍児も立ち上がり、並ぶ形になると。

「やっぱり!」沙世が嬉しそうに手を叩いた。なんだろう?

「龍児くん、ぐっと背が伸びたわね!」

「………え?」思わず、隣を二度見してしまう。相手も同じ反応をして、二回とも目が合った。

「最近、龍児くんがしきりに、ヒザが痛いヒジが痛いって言うから、成長痛じゃないかしらって、思ってたんだけど、豪星くんと並ぶと一目瞭然ね!」

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