「いいんすか!」

「もちろんだ。レンタカー借りてみんなで行こうぜ」

思わぬ誘いに、二人身を乗り出す。

「いく?」

「行っちゃう?」

目くばせして確認し合うが。

「……あ、待ってけんじ。面白いこと考えた」兄がふと呟き、悪い顔を見せる。

「おじさん。俺たちも海行きます。けど、別々で行ってもいいですか?」

「ん?別に良いけどよ。一緒に乗って行けばいいじゃないか」

「へへー。ちょっとやりたい事があって。あのですねー……」

兄が説明し、龍児の父親がうなずく。けんじといえば、なるほど。それは良い案だと、同意を示した。

「お前ら、ほんと龍児が大好きだな」呆れたように言って、父親が片付けを始める。

「おじさん。この事龍児に内緒にしておいてください」

「分かったわかった」

「さてそれじゃあ、海に向けて準備しますかー!」

「直ぐ民宿取らないとな」スマホを取り出し、さんたくじま、みんしゅく、で、検索。

「えーと、経路も調べないとね」

「電車で行けっかな?予算は……」

「時刻はー……」



せまる海。もとい、三択島旅行前日。

荷造りを始めた豪星を、ひょいと、父親が覗き込む。

「水着に、タオルに、浮輪ね。いいねー海っぽくて。あ、豪星くん。日焼け止め持っていきなよ?」

「女の子じゃあるまいし。いらないだろ」

「いやいや。海の日焼けなめちゃだめだよ?パパのいう事聞かないと、あとで泣きを見るのは豪星くんだからね?」

「意味わかんないし。……えーと、これで忘れ物ないかな」

「明日、どこの海に行くんだっけ?」

「三択島っていうところ」

「あーあそこね!僕も行った事あるよ!海も砂浜もきれいだし、食べ物も美味しいし、いいところだよ。楽しんでおいでね」

「言われなくてもそのつもりだよ」

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