「ねえ、すごく喜んでたけど、なに渡したの?」振り返って尋ねるも。

「えーと、男の子なら、好きな相手に一回は夢見るものかな」あいまいに流される。

「なにそれ?」

「うんまあ……気にしないで?」

「うん?……うん」まあいいや。今度猫汰さんに聞いてみよう。



三者面談に指定された二階奥の生活指導室に親子で入るなり。

「お。中嶋来たか。………ええと」担任教師が言葉を濁した。十中八九、父親の所為である。

「……すみません。親がこんな格好で」

「い、いやいや。まあ、うん。似合っていらっしゃるし……いいんじゃないかな」

たじろぎながらフォローする教師に、申しわけなさが募る。

「どうもどうも先生!いつも息子がお世話になってますー」

本人と言えば、まったく気にせず椅子に腰かけ始めた。これが親かと思うと、情けない気分になってくるが、代えがないのでしょうがない。

「ええと。それじゃあ三者面談を始めますね」気を取り直した教師が、持っていたファイルからいくつか用紙を取り出し、読み上げ始める。

「まず、豪星君の成績ですが、期末順位、評価点共に上の下といったところで、中々良い成績を残されています。あと、素行についてですが、こちらも全く問題なく」

「あれ?彼氏がいるのは問題にならないの?」

「ちょっと黙ってて」思い切り足を踏み潰す。「あいた!」痛そうに唸る父親が、豪星を睨むも、知らん顔だ。

「……ええと、続けさせていただきますね。次に、進路の件ですが……」

………。

面談は20分で終了。挨拶を滞りなく済ませると、生活指導室を退出し。そして。

「いやー、吃驚するほどつまらなかったね」父親が、豪星の肩を叩きながら笑う。

「それは俺に対して?先生に対して?」

「はっはっは!どっちもだよね!……いったい!また殴った!」

ああもう。本当に情けない……。

「ところで豪星君。僕、トイレに行きたいんだけど、どの辺にあるかな?」

「え?ああ。向こうまっすぐ行って奥にあるよ」

「わかった!それじゃあここで解散だね。ばいばい豪星君」父親が、手を振りふり去って行く。

「はいはい。さよーなら」父親が去って行くのを見届けた後、反対方向にある玄関口へと向かった。

玄関口は、三者面談の日だけあって、何時もより人の数がまばらだった。「あ、龍児君」その中に、知った人の顔を見つけて駆け寄る。相手も豪星に気づくなり「ごうせー!」破顔した。

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