以前の通り、適当な場所に自転車をとめ、中に入り込もうとすると。
「あれ?」へんじが頓狂な声を上げ、生垣の脇に隠れた。つられてけんじも隠れると。「あ」同じような声を上げる。
「あれ。あそこ、玄関のとこにいるの、豪星先輩じゃないか?」
「そうだね。龍ちゃんもいるね」
割って入るのもなんなので、しばらく、生垣に隠れて様子を窺う。
先輩はなにやら袋を持って、龍児に手渡している様子だ。あの印刷は……ラブリーパークか。
「……うん。うんそう。ラブリーパークに行ってきたんだ」
「へー。俺、行ったことない」
「俺も行ったことなかったんだけど、すっごく楽しかったよ」
どうやら、あの袋はラブリーパークの土産らしい。それを、龍児に渡しに来たようだ。
「ん?ちょっと待って。豪星先輩誰と行ったんだろう」
「そりゃお前、イケメン先輩に決まってんだろ」
「まじで?ホモデートでラブリーパーク行ったの?すげーな、豪胆すぎだろ」
「豪星先輩、猫先輩の影響で心臓に毛が生えてきたんじゃない?……お、龍ちゃんが早速お土産を開いた」
龍児が袋から取り出し、開いた箱の中にはマグカップが入っていた。それをくるりと眺めて、嬉しそうにほほ笑んでいる。
「ごうせー、この猫かわいいな」
「でしょう?三匹の猫っていうアニメーションに出て来る、黒猫ちゃんって言うんだけど、龍児くんに似てるから買ってきちゃった。良かったらつかってね」
「うん。ありがと」
いそいそカップをしまうと、大事そうに抱え込む。その姿がいじらしい。
「ていうか、豪星先輩ってさ、男友達にマグカップ買ってくるとか、ちょっとずれてるよね」
「いやいや。土産に生活品買ってくるとか、龍児に脈ある証拠かもよ?」
「いやいや。あれ完全に身内扱いだよ。親戚の子に普段使いの食器買ってきてあげたやつだよ」
龍児の方は結構本気っぽいんだけど、相手があの調子じゃあな……。
「……ごうせー、ラブリーパークって、あいつと行ったのか?」
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