「はあ。分かりました……」

彼氏をレジの傍に待機させると、ひとり店の中を歩き回った。

店は数店。ブースは多数。買えるものは、歯ブラシから珈琲スティックなど多岐にわたる。

……さて、マグカップとパンツより良いものって、なにかあるかな。彼氏用の弁当箱……は、うれしいけど、今買ってもらうものでもないしな。
じゃあ、ハンドクリームとか?……うーん。彼氏に貰ったハンドクリームっていうのは、ぐっとくるけど、消耗品だし、無くなっちゃうものはちょっとなー……。
うーん。ティッシュケース、はし、スプーン。水筒……イヤホンジャック。スマホケース、フォトフレーム。かばん、スリッパ、エプロン、アクセサリー、ピアス……お、ピアスよくない?身に着けられるし、無くならないし。

どうせなら、これもお揃いで買っちゃう?で、豪星くん、耳に穴空いてないだろうから、俺が空けちゃう?

やだー。彼氏に穴あけるとか、いやらしー。

「……ん!」卑猥な妄想にふけっている最中。あるものを見つけて飛び上がる。

こ、ここ、これだ!これだよこれ!なにやってんの俺!旅先でこれ以上うれしいプレゼントないよ!これしかないって!

「豪星くん!」早速、レジ隣で待機している彼氏の元へ駆け込むと「決まりました?……って、うわー!」のんびり答える相手の腕をわし掴んで、来た道を駆け戻る。

「ちょっと!猫汰さん!どうしたんですか!」

「ゆびわ!」

「はい!?なんですか!?」

「指輪!指輪がほしい!買って!」

「ええ!?指輪!?ちょっとお高くない!?」

「俺が金出すから今すぐ買えや!!」

「それ俺が買う意味あるの!?」

「あるにきまってるでしょー!」

押し問答の末、ピアス売り場の隣にある指輪売り場に彼氏を押し込み、意気揚々と指輪を選ぶ。

「えーと、俺、左手の薬指が17号だからー……これかな。うん、ぴったり。うーんでも、左手はまだ気が早いか。右手にしとこう」

「はあ……お好きになさって下さい」

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