ええ!どうしよう!お金とあひるの映画館付近に戻ってみる!?けど、どこのトイレ行ったか分かんないし!もうトイレから出てるよね!?連絡待ってるよね!?
やばいはぐれちゃう!ああでも、此処から離れたら余計に離れるかも!この人ごみで連絡手段ないのにはぐれるとか!困る!
あたふたしている内にショーは始まってしまい、数分その場で懊悩(おうのう)した後、しぶしぶ、席に落ち着いた。今は、彼氏がどこかのショーでうろうろしているかもしれないから、とりあえず、ショーが終わるまで待って、終わったらトイレ付近を捜索しよう。もしかしたら、奇跡的にお金とあひるの映画館付近に彼氏が戻って来て、見つかるかもしれない。
……あ、豪星くんの為に取っておいた右隣の席、とられちゃった。まあしょうがないけど。今ひとりだし。ひともいないのに、人気のショーを二席独占なんて無意味だし。
けど、よりにもよってとられた相手が恋人連れかよ。何気に、左隣の席もカップルだしさ。こちとら独り身で見てんのに、両脇でいちゃついてんじゃねーよふざけんな。
……あーあ。豪星くんと見たかったなぁ。
かわいいなー二羽のカラス。ショー中盤で、赤いカラスが茶色いカラスにキスされるとことか最高だよね。
いっしょに見たかったなー……。
閉幕が終わるまで観覧し、舞台が閉じると、はけていく人波に乗って猫汰も出入り口に向かう。
うだうだ落ち込んでいてもしょうがない。気を取り直して、はぐれた彼氏の捜索にあたらなければ。
お金とあひるの映画館付近で出会えなかったら、どうしようかな。一応、園内を何周かしてみて、いざとなったら場内放送を利用して……。
「あ、いた」
「え」ちょうど、出入り口の枠を潜ったとき、知った声が横から響いた。身体が硬直し、首だけで振り向くと、そこには。
「よかった猫汰さん。直ぐに会えて」
「……は?え、どうしてダーリン、ここにいるの……?」
「え?だって、猫汰さんがショーで席取ってるって言ってたから。入口で待ってれば会えるかなって」
「そうだけど。じゃなくて。なんで俺が此処にいるって分かったの?他にも、同じ時間にいろんなところでショーやってたのに」
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