「ご、豪星くん!」抱き着かれるっていうか、全身でしがみつかれてる感じだけど……彼氏からこんな風に抱擁されたのは初めてで、一気にテンションが上がる。

「こ、こ、こわかった!なにあれ怖い!落ちるのも揺れるのも激しいこわい……っ」

「落ち着いて!」いや落ち着かなくて良いか!落ち着かなくてどうぞ!?

「もう降りたから大丈夫だよ!豪星くん!」

「は、はい……っ」

……なんか、理想のきゃーこわーい!とは大分違ったけど。

これはこれで、いいかも!?

「す、すみません……っ、暫くこのままでいてください」

よろこんでー!



よほどお金とあひるの映画館が怖かったらしく、彼氏はアトラクションから出てもぐったりしていた。初めは彼氏の可愛い姿にひたすらはしゃいでいた猫汰だったが、段々と、「可哀想だったかな?」「やっぱり途中退出した方が良かったかな?」という気持ちになってくる。

次に来た時はなるべくあそこは避けよう。と心に決めて、「豪星くん。次は夜のショー見よっか」ぐったりしている横顔に話しかける。真っ青な顔が、幾分やわらぎ、こくりと頷く。

「あ、その前にお手洗い行っても良いですか?」

「もちろんいいよー。それじゃ、俺先に行って席取ってるね。場所は着いたら連絡するから、のんびり来てね」

「分かりました」

そこで二手に分かれて、猫汰は早速夜のショーへ向かった。場所は、お金とあひる、三匹の猫を通り過ぎた、二羽のカラスだ。

お金とあひるも、三匹の猫も、この時間にショーをやっているけれど、夜のショウは、二羽のカラスが好きなのだ。すっごく可愛いし面白いから、きっと彼氏も気に入るはず。

既に人が集まっていて、ショーを見る為場所取りをする姿を多く見かけた。猫汰も、二人分の席を陣取り、早速、彼氏に連絡するが。

「………あれ!?」途中でぶつん!とスマホが落ちて、焦った。

やだ!充電なくなっちゃった!?

写真と動画撮り過ぎて、充電心もとないなーとは思ってたけど、ちょっと連絡するくらいならまだ大丈夫と思ってたのに!

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